主要産油国の減産実施状況が良好だったとしても、原油市場には中国やインドの需要減少という問題が立ちふさがる(写真はイメージ)

 今年に入り米WTI原油価格は1バレル=50ドル台前半で安定的に推移している。

 これについて「サウジアラビアの減産に対する意欲の表れだ」と評価する声がある。

 1月16日、サウジアラビアのファリハ・エネルギー鉱物資源相は「主要産油国による減産合意を厳格に遵守する」と語った。同相は先週のサウジアラビアの原油生産量が日量1000万バレルを下回ったことを明らかにしているが、このことは同国が昨年末の主要産油国による減産合意で受け入れた日量1006万バレル以上の減産を行っていることを意味する。

 だが、サウジアラビアは今後も公約通り減産を実行していくだろうか。

 まず、昨年後半のサウジアラビアの原油生産量は日量1070万バレルを超えオーバーヒート気味だった。その反動で生産量が短期的に減少した可能性がある。また、冬場は国内の冷房需要がなくなるためサウジアラビアの原油生産量は夏場に比べて日量50万バレル前後減少するのが通例である。

 ファハド・エネルギー相は「夏場以降の原油市場は均衡を回復することから、OPECが非加盟国の産油国と結んだ減産合意はおそらく延長の必要はないだろう」と述べ、夏場以降の減産について早くも消極的な態度を示している。その理由は、サウジアラビアが例年通り夏場に原油生産量を増加することを想定しているからだろう。減産を続けていると「痛みを伴う減産」になりかねないというわけだ。

 サウジアラビア政府は、今年の予算を策定する際に、原油収入が前年に比べて46%増加するという野心的な目標を掲げた。だが、これを実現するためにはどうしても増産が必要である。「今年前半は見かけ上の減産で原油価格を引き上げることにより原油収入の減少を最小限に抑え、後半には生産量を増大させて原油収入の大幅アップを狙う」というシナリオを描いているのではないだろうか。