OPECに勝利したシェールオイル、死角はないのか?

米国の原油需要が左右する原油価格の先行き

2017.03.17(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49441
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 米国の新車販売は2カ月連続で前年比マイナスとなっている。大手自動車メーカーが販売奨励金(インセンティブ)攻勢をかけているが、販売店で在庫が山積し、S&Pによれば1月のサブプライム自動車ローンの貸倒率は9.1%とーマンショック以降で最悪となっている。

 12の州でガソリン税が今後値上げされることも予想されることから、「米国のガソリン需要は来年までにピークを迎える」との声が出始めており、原油価格は1バレル=30ドルを割る可能性もある。そうなればシェール企業も大量倒産を余儀なくされ、シェール・バブルの崩壊は米国経済に深刻な影響を与えかねない。

原油価格の安定が焦眉の急のサウジ

 最後にサウジアラビアの状況について触れておこう。

 来日したサルマン国王は安倍首相と会談し、石油依存体質からの脱却を目指すための「日・サウジ・ビジョン2030」を発表した。

 ビジョン2030の実質的な責任者であるムハンマド副皇太子は3月13日、トランプ新大統領と会談するために訪米に出発した。オバマ政権時代に冷え込んだ両国関係を修復することが主目的である。これを受けて米国は前政権下で凍結されていたサウジアラビアへの武器輸出(イエメンでの軍事作戦に使用)にゴーサインを出した。

 いずれも重要な政策の遂行だが、サウジアラビアにとっての焦眉の急は「原油価格をいかに安定させるか」であろう。サウジアラビアの今年の予算は原油価格が1バレル=55ドルで策定されており、財政が均衡する原油価格は同80ドル以上である。

 原油価格の先行きに危機感を抱くクウェート・石油相は、OPEC加盟国では初めて「6月以降も減産合意を延長することを支持する」考えを明らかにした。OPECの雄であるサウジアラビアも、一刻も早く市場に対して新たなメッセージを発出すべきである。

 さらに、財政面でも地域の安全保障面でも悪影響を及ぼしているイエメンへの軍事作戦を一刻も早く停止すべきことは論を待たない。だが、ムハンマド副皇太子にとっての「大きな失点」となる苦渋の決断をサルマン国王は行うことができるだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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