4大会計事務所の一角、EY Japan(以下、EY)のコンサルティング事業が急成長している。EYは監査法人としてのウエートが大きく、コンサルティング領域においては長く他社の後塵を拝していた。しかし2019年、新たな成長戦略「プロジェクト・ドラゴン」を策定して以降、コンサルティング事業が2020~22年度の3期連続で国内売上成長率30%超を記録するなど、その事業ポートフォリオは大きく変わりつつある。「監査のEY」はなぜ「コンサルも強いEY」へと変貌しつつあるのか。日本企業のDXのあるべき姿や人材育成などの論点とともに、EYストラテジー・アンド・コンサルティング代表取締役の吉川聡氏に聞いた。
企業がDXを推進する上で欠かせないのが、コンサルティングファームやシステムインテグレーター(SIer)といったパートナー企業の存在だ。今、そのパートナー企業たちが大きく変わろうとしている。DXを支援する側の企業は今、何を考え、どう変わろうとしているのか?各社の特徴や強みはどこにあるのか?主要企業の責任者を直撃します。
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少なくなった「古き良き経営コンサル」
──EYは近年、コンサルティング事業で躍進しています。なぜでしょうか。
吉川聡氏(以下敬称略) EYの強みはコンサルタント同士の「コラボレーション」にあります。コラボレーションはコンサル業界ではすでに陳腐化した言葉ではありますが、他社にはない強みとしてわれわれが大事にしている価値観です。特に、会計事務所系BIG4の顔ぶれを見た時、「経営コンサルティング」と税務や取引を含めた「ファイナンスコンサルティング」を1つの会社として提供しているのは当社だけではないでしょうか。
当社がお付き合いしている上場企業は、海外事業部もありますから、税務上の知識が必要なほか、人事の情報もそこに紐づいています。また、世界に散らばっているそれぞれの事業の決算情報を元にした経営計画を策定する必要があります。そうした環境なのに「経営コンサルだけ」「ファイナンスのアドバイスだけ」のいずれかを提供するだけでは、クライアントのニーズに寄り添えません。
私が2019年にEYに移籍してからよく言われるのは「EYさんは、コンサルタント同士の仲がすごく良いよね」ということ。当社には金融やテクノロジー、M&Aアドバイザリー、組織・人材マネジメントなど、各領域のプロフェッショナルが揃っていますが、彼らが共にお客さまの経営の中枢に入り込み、課題に一気通貫にアプローチすることができます。「Building a better working world〜より良い社会の構築を目指して」という会社のパーパスに沿って各コンサルタントが働く文化ができているのでしょう。実際、パーパスの策定もBIG4のどの企業よりも早かったといわれてますし、コラボレーションを実現できる文化が整備されているのだと思います。
──EYのコンサル事業は業界内で比較したときに、どのような点において強みがあるとお考えですか。
吉川 老舗の経営コンサル、会計事務所系のBIG4、ITコンサル系の企業と、大手のポジショニングを分けるとしましょう。近年顕著なのは、DXの熱が高まるとともに、老舗企業がデジタル系の案件に取り組むようになってきています。IT系コンサルの需要が高まっているのは言わずもがなです。
そこで何が起きているか。端的に言えば「伝統的な経営コンサルティングの空洞化」が起き始めています。実際、よくクライアントからも「IT予算をつけたときに、ファームが烏合の衆のように群がってくるが、経営イシューの相談について親身に時間を使ってくれる会社が減った」という話を聞きます。われわれが目指しているのは、昔から変わらないコンサルタントの生業である「クライアントの経営課題の解決」です。ここでお約束しておきますが、われわれは大企業のIT予算を「食い尽くす」ようなことはしません。
大企業の経営環境は年々不確実性が高くなっています。そうした中では、「社会アジェンダ」とも呼べるあらゆる業界の潮流を読んだ上で、経営計画を策定していく必要があります。
EYは業界のプロフェッショナルを配置する「セクターを中心としたオペレーション」を取り入れています。近年、成長を収めているのは数少なくなった「王道の経営コンサルティング」を実行できているからなのでしょう。
こうした取り組みの結果として、現在は各業界で大きなシェアを抱える企業様と長期的な関係性を築くことができています。DXをはじめとして、経営イシューが「バズワード」的に広まっている時こそ、その企業にとって本当に必要なコンサルを行える存在でありたいと思っています。