富士通 執行役員SEVP グローバルビジネスソリューションBG長(兼)全社Fujitsu Uvance担当の高橋美波氏(撮影:今祥雄)

 富士通が、新たな事業モデルである「Fujitsu Uvance」(以下、Uvance)に注力している。従来のビジネスから脱し、業界横断で社会課題を解決するプラットフォームを構築、企業が直面する複雑な課題をテクノロジーで支援する。まさに富士通の変革を象徴する取り組みと言えるだろう。Uvanceにより顧客や社会にどのような価値を提供しようとしているのか。また、2025年度に7000億円という売上目標をいかにして達成しようとしているのか。その真価と勝算を、Uvance事業を統括する高橋美波氏に聞いた。

日本企業のDXの取り組みは二極化している

高橋 美波/富士通 執行役員SEVP グローバルビジネスソリューションBG長(兼)全社Fujitsu Uvance担当

1987年ソニー入社。コンシューマー部門の海外事業に従事し、北米・ヨーロッパ駐在をはじめ海外拠点の役員を経験。2014年日本マイクロソフトに入社。クラウド市場の開拓やパートナー連携、大企業を中心としたDX支援をリードした。 2021年6月に富士通に入社。2022年4月よりFujitsu Uvanceビジネスを主導する。

高橋美波氏(以下敬称略) DXの支援は、6年ほど前の前職時代から続けています。私が一貫してお客さまに説明しているのは、DXのメリットは、単に自社のシステムをクラウドに移すことでコストが削減できることだけではないということです。

 例えばある大手化粧品メーカーは、お客さまの肌のデータを集める仕組みを組み込んだサービスを提供し、商品企画に活用しています。製造業においても、これまではお客さまの利用状況を想定してものづくりが行われてきましたが、データの統合によって、お客さまのフィードバックが即時に製品作りに反映できるようになります。これができるのがデータドリブンな企業であり、厳しい競争に勝ち残るための条件といえます。

 実際に、データドリブンな企業を目指し、DXを進めたいと考える企業は増えています。先進的な企業ではDXをコストではなく戦略的な投資と捉え、自社にITエンジニアを抱える動きも増えてきています。しかしそれはまだ、主流ではありません。日本のDXは発展途上だと思います。

――DXの取り組みが進む企業と、そうでない企業に分かれているということでしょうか。

高橋 そうですね。先進的な企業と、取り組めていない企業の二極化が進んでいると見ています。先進的な企業は、ITをコストではなく、成長戦略の一つのキーコーポーネントとして捉えて、積極的にお金と人材を投入しています。CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)を採用したり、データサイエンティストを採用するなど、体制も強化しています。

 逆に、DXが進まない企業も、経営者に危機感や認識が足りないということではないと思います。なんとかしなければいけないと思いつつ、具体的に何から着手すればいいのかがわからないのが、最も大きな問題ではないかと思っています。

――企業のDXを支援する立場である富士通も変わろうとしています。それはなぜですか。

高橋 社長の時田(隆仁氏)が数年前に自社のトランスフォーメーションを掲げたときに感じたものは、日本固有のシステムインテグレーション(SI)という市場が淘汰(とうた)されていく未来だと思います。

※時田社長インタビュー記事「富士通・時田社長が力を込めて語る、矢継ぎ早に変革に取り組む“本当の意味”」

 欧米ではITエンジニアは企業内に多く所属していますが、日本は逆にSIerに多い。これから日本も欧米に近づいていくということです。5年後、10年後に従来型のSIビジネスが全くなくなるということはないですが、縮小していく流れの中で、当社は日本最大級のSIerとして事業ポートフォリオの変革をしなければ生き残れないのです。

 その過程の中で、DXだけでなくSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)にもスコープしなければ、企業のパートナーとしての価値は十分ではありません。変わりゆく環境の下で、富士通としてどう戦い、シェアを取っていくか、検討の結果たどりついたものが「Fujitsu Uvance」です。