(左から)BIPROGY Techマーケ&デザイン企画部長の小林亜紀子氏、BIPROGY 常務執行役員の永島直史氏、BIPROGY常務執行役員CDO ビジネスサービス部門長の佐々木貴司氏(撮影:宮崎訓幸)

 BIPROGY(旧・日本ユニシス)が社会課題を解決するためのプラットフォーム構築に注力している。金融機関の基幹システムなどで培った技術力をベースに、大企業、スタートアップや自治体、大学などが参加できるテーマ別のプラットフォームサービスを開発。従来のSIerビジネスから脱却し、顧客企業のデジタル変革を支援する同社の取り組みを聞いた。

社名変更に掛ける思いは既存顧客から高く評価された

──2022年4月に社名変更して約2年がたちましたが、社内外の反応はいかがですか。

永島 直史/BIPROGY 常務執行役員

1987年日本ユニバック(当時)入社。金融機関向け業務ソリューションビジネスの企画・販売を担当。2016年から新規事業開発を担当し、2018年業務執行役員に就任。2023年より現職。

永島直史氏(以下敬称略) BIPROGYは、光が屈折・反射したときに見える7色の頭文字を並べた造語です。すべての人たちがもつ光を掛け合わせ、希望ある未来に導く社会的価値創出企業になるという想いを込めています。

 社名変更を発表した直後は、正直さまざまな反応がありました。元の日本ユニシスという社名の方になじみがあるのは当たり前ですから、社名が変わったということを広く伝えるために、コーポーレートとしてのブランディング施策を実施してきました。リアルイベントで、社長をはじめとした幹部が社名に込めた思いを語り、ブランドムービーも作成しました。

 社外、社内に対して、新社名の浸透を図ることはもちろん大事です。しかし最も重要なのは、社員の実際の行動を、新社名に込めた意味と一致させることです。当社の社員が日々の活動にこの思想を埋め込み、お客さま、パートナー企業のかたにお話しするときに、それを自分のものとして説明できなければいけません。

佐々木 貴司/BIPROGY常務執行役員CDO ビジネスサービス部門長

1989年日本ユニシス(当時)に入社後、日本銀行関連、大手銀行プロジェクトなど数多くの金融システムを開発。エアライン、郵政のシステム開発リーダーも務める。2019年業務執行役員、2021年より現職。

佐々木貴司氏(以下敬称略) 当社と長いお付き合いのあるお客さまは、社名変更を非常に好意的に受け止めていただいています。当社がこれまで築いてきた実績を踏まえて、新しいことに挑戦するという訴えは、賛同いただくことが増えており、浸透してきていると感じています。

 ただ、新規の企業については、「BIPROGYって何?」というご意見は今でも少なからずあります。さらに活動を通じて、知っていただく必要があると思います。

──BIPROGYはここ数年、従来のSIer(システムインテグレーター)という事業形態とは異なる「ビジネスエコシステム」の構築に取り組んでいます。その背景に、顧客企業の考え方が変わってきていることがあるのでしょうか。

佐々木 よく、日本企業のDXは進みが遅いと言われることがあります。これは、企業とITの関係性が各国で異なることを考えると、構造的な違いであるともいえます。アナログ時代から業務を水平思考で捉え、標準化を進めていたため、IT化によってさらに標準化が進んだ欧米、IT化自体がまだ初期段階にあるアジア諸国などと比べ、日本は、IT化そのものの取り組みは早かったと思います。早かった分、個別に改善を進めたことでサイロ化が進んでしまったという事情があります。

小林 亜紀子/BIPROGY Techマーケ&デザイン企画部長

2000年日本ユニシス(当時)入社。技術開発部門にてソフトウエアプロダクト開発に従事。2011年経営企画部門で自社の経営課題分析を担当。中期経営計画策定プロジェクトにも参画。2015年に商品企画担当。2021年より現職。技術リサーチ、サービス企画を担当。

永島 それに加えて、社会が成熟していたことで、既得権益がさまざまな場面で存在していることも、仕組みを変えることを阻んできたと思います。しかし、ここに来てそうした既得権益は、規制緩和や制度の変更でかなり解消しています。そうなれば、元々日本人は学ぶことが好きで、いいものを採り入れる気質があると思いますので、ここからのDXの進みは早いのではないかと期待しています。

小林亜紀子氏(以下敬称略) 企業の情報システム部門の視点では、ここ数年のDXは、ほぼクラウド化を軸に進んできたと思います。多くの業種、業態でクラウドのメリットが認識され、さらに多くの部門で使おうとしている企業が増えています。

 一方で、戦略や業務にデジタルをどう使うのかというところですが、ここにはまだ課題があると感じています。なぜデジタル化するのか、何のためにDXを実行するのかについて、明確な方針を持てないでいる企業が多いと感じています。

金融機関のDXでは守りと攻めの両立を支援

──そうした課題を持つ企業に対して、BIPROGYではどのような働きかけをしているのでしょうか。

永島 従来のSIerが担っていた、IT中心からビジネス中心へ、またお客さまと1対1の対応から、1対N、あるいはN対Nのビジネスへと変えることで、新たな価値を生み出していく必要があります。お客さまごとの個別システムの長所を生かしながら、オープン化が可能な部分はクラウドベースのシステムを使うことで、個別の開発を極力少なくし、開発期間を短縮します。さらに、お客さま同士が業務提携をして新しいビジネスを始める際の障壁を少なくしていきます。

 こうした支援に対応するためには、当然、当社も働き方を変えなければいけません。個社に対してITの構築をしていたSIerのビジネスは、ある意味要件がはっきり決まっていました。しかし、プラットフォームで実現する価値は、最初から明確にはなっていないのです。そのため、よりお客さまに寄り添って、一緒に考えていく必要があります。

──BIPROGYは金融機関のシステムを多く手がけています。高い信頼性、可用性が求められる金融機関にとって、DXの課題は多いのでしょうか。

佐々木 当社は現在、金融機関の中でも地方銀行や信用金庫などに対して、中核である預金、為替、融資といったいわゆる勘定系のシステムを提供しています。初期は専用システムを使い、機械化による大量の処理をこなすことを目的としていました。それがオープン化の時代になり、Windowsを基盤としたシステムに変わりました。

 金融機関は、お客さまの資金をしっかりあずかり、必要なときに移動するという使命を担っています。その部分は保ちながら、サービスのビジネスを広げていく部分は、クラウドの標準プラットフォームを使い、外部と接続できる柔軟性が不可欠です。守りを固めたうえで攻めていくためのソリューションを立ち上げ、成長させています。当社が30年以上培ってきた金融のシステム開発の経験が生かせると思っています。

永島 当社は2007年に、金融機関の勘定系システムとして世界で初めてWindowsでオープン化した製品の提供を開始しました。当初は「日本ユニシス(当時)はどうかしている」と冷ややかに見られましたが、金融機関もサービス競争の時代に入り、非競争領域である基幹システムのコストを削減することは必然であるという信念で作ったシステムです。それが結局は支持されました。