■【前編】注目の「両利き経営」に飛びついても成果を出せない日本企業の致命的な間違い
■【後編】アマゾンの方が日本企業以上に「カイゼン」で成果をあげている根本的な理由(今回)
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日本企業が閉塞感を打破し、「負のスパイラル」から抜け出すために、経営者はいかに行動すべきなのか。前編に続き、『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』(光文社)を著した慶應義塾大学商学部准教授 岩尾俊兵氏に、日本企業が真の競争優位を得るために必要な観点を聞いた。
企業経営は「カネ優位」から「ヒト優先」へシフトしている
――前編では、企業の価値を時価総額で測る「カネ優位の経営」は「似非(えせ)世界標準」の考え方であること、近年は人を大事にする「ヒト優位の経営」へ世界的にシフトしていることを伺いしました。「ヒト優位の経営」へのシフトが進む背景には、何があるのでしょうか。
岩尾俊兵氏(以下敬称略) 一つの要因は、経済状況が「デフレ」から「インフレ」へと変化していることが挙げられます。
「インフレ」は、物価が上がり、給料も上がるという状況です。つまり、「カネ」の価値が下がり、相対的に「ヒト」の価値が上がるということです。一方、「デフレ」では「ヒト」の価値が下がり、その分、「カネ」の価値が上がります。
成功する企業とは、ずばり「希少資源をより多く集めた企業」です。ですから、インフレの時代には、希少資源としての「ヒト」が企業成功の源泉となり、デフレの時代には、希少資源としての「カネ」が企業成功の源泉となるわけです。
想像してみてください。日本がインフレに湧いていた昭和の時代、成功する企業の経営者は、多くの人に「あの人の下で働きたい」と思われていたはずです。
一方、デフレになった平成の時代に注目を集めた経営者は、「カネを集めることがうまい人」「投資の才能に長けている人」だったように思います。