「これで勝てるのか」を
常に自問自答する
佐藤 グローバルに勝つ強い組織をつくるために、いま経営トップに求められていることはなんでしょうか。
八木 みなさんよく「日本的経営」という言葉を使いますよね。日本的という大それた言葉を使うから変えられないかと思うのでしょうが、経営とは企業単位にやっていることで、変えようと思ったらいくらでも変えられます。
「日本的経営」は、ボストン・コンサルティング・グループの日本支社を設立したアメリカのジェイムズ・アベグレンが『日本の経営』(1958年、ダイヤモンド社)で著した言葉です。日本人が言ったわけでもない。経営環境にパラダイムシフトがあったのに、「三種の神器」と言われて、60年も変えてこなかったことが、日本企業の多くが競争力を失った理由の一つだと思います。「日本的経営」ではなく、自分たちらしい経営をやるべきなのです。合理性と大局観と、自分たちがやりたいという思いを取り入れて経営するのです。
仲川 当社では、ITやIoTなどのデジタル人材は、キャリアでかなり採用しているのですが、もう当社の経営スケールに合わないために、すべて個別対応で採用しています。他には、人事はえらいなと思うのですが、インドやベトナムの工科大学に行き、新卒でそこから採用しています。
日本語を喋れない人たちをインドやベトナムから連れてきて、ITやIoTを開発する部門に配属しています。
だんだん日本語を覚えてきていますが、別に日本語ができなくても英語で仕事はできますから、不自由なく、すごく活躍していますね。
八木 グローバルで戦っている会社とは、そういう会社ですね。まず、やってみればいいのです。
1番のポイントは、先ほども言いましたが「面従腹背」を取り除けていないことだと私は思っています。
「グローバルで勝ち続けるためにやるべきことは、わかっているよ」と、たいていの人は言うでしょう。「じゃあ、なぜできないのですか?」と聞くと、「部下がやるべきことをやってくれないから」と言う。だったらやらない人は外して、意欲のある人を抜擢したり、外から優秀な人を採用してくればいいじゃないですか。別に日本人でなくても構わないのですよ。やれる人は世界中にいくらでもいるわけです。人材の確保をグローバルの視点で見直す。その行動をなかなか起こせないのが問題だと思っています。
わかっているのに、それを実行に移さず、抵抗があるかもしれないと避けて通ろうとする。
結果を出すことよりも関係性の方を重視していたのでは勝てません。子どものころからずっと「みんなと仲良くしなさい」とか「思いやりを持って」などと言われて育ってきたことも一因でしょうが、タフなアクションを取ることに躊躇がある。変革には多くの人が反対するものです。それを押し切ってでも実行する覚悟、胆力が求められています。
何か目的を達成することを考えたときには、ただひたすら仲良くするだけではダメなのです。「和を以って貴しとなす」と言いますが、「目的を達成するための和」です。決めるまでのけんけんがくがくの議論は必要ですが、決めた目的に向かって一緒にやらない人に経営を担う居場所はないのです。
「これで勝てるのか?」と、自問自答しながら本質を突く経営をやっていかなければ、グローバルで勝ち残れません。
株式会社レイヤーズ・コンサルティング 事業戦略事業部 マネージングディレクター。消費財、流通、情報・通信、ヘルスケア業界等の上場企業を中心に、事業戦略、マーケティング戦略、営業改革、新規事業開発、M&A戦略、組織改革のプロジェクトを責任者・リーダーとして多数手がける。
<傍白>
働き方改革の本質は、自社が提供する「仕事の付加価値」とは何か?を徹底的に考え抜くことにあると考えます。働き方改革は、ビジネス戦略や方向性に基づき、目指す行動・組織・風土を加速させるものでなくてはならなりません。
ゆえに、本質的には「働き方改革」ではなく「働き方デザイン」というべきです。
働き方改革を「企業の競争力向上」と位置づけ、全社を挙げて取り組んでいった時、はじめて抜本的な生産性向上を生み出す取り組みとなっていきます。
間違っても、人事部や総務部だけで粛々と行う“やっただけ働き方改革”に陥って欲しくないと思っています。真の働き方改革の実現こそが、日本企業の大きな飛躍につながるものと考えています。
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