従来のコンサルティング会社のアンチテーゼとして誕生

 ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ(以下、ケンブリッジ)は1991年、アメリカ・マサチューセッツ州ケンブリッジ市で誕生した。その六年後には日本法人を設立し、日本企業に対してもきめ細かなサービスを提供している。

ディレクター 白川 克 氏

同社ディレクターの白川克氏は「当社は、それまでのITコンサルティングに対するアンチテーゼから始まりました」と紹介する。

従来は、コンサルタントが分厚い提案書を書いてプレゼンテーションをしても実現性が伴わず、「絵に描いた餅」に終わるケースや、時間が経てば経つほどコンサルタントが儲かるなどといったケースが多かったという。

ケンブリッジは、これらに対するアンチテーゼを原点とするだけあって、ビジネスモデルは明快だ。前者に対しては、顧客企業内でプロジェクトチームを組成し、プロジェクト完了まで進行役として関与する「ファシリテーション型コンサルティング」でプロジェクト実行まで寄り添う。

一方後者に対しては、納期・価格保証を謳い、製品販売を行わない中立性を貫く。そのほかにも独自の革新的なスピード導入手法「ケンブリッジRAD」によって、高いプロジェクト成功率を誇る。

こうして高い顧客満足度を勝ち得てきたケンブリッジだが、もう一つ特筆すべき点がある。それが人材育成力だ。

コンサルタントはあくまでも外部の人間であり、一時的な「傭兵」。「コンサルタントがいなくなったらチームの能力が元に戻ってしまった」というケースが珍しくないが、顧客企業の経営者から、「うちの社員たちがこんなに頼もしく育つとは思わなかった」、と感謝されると白川氏は明かす。その秘密はどこにあるのか。
 

顧客企業の人材育成を可能にする独自のノウハウと方法論

 人材育成に対する企業のニーズは年々高まっている。特に、次世代のリーダー層の育成は、どの企業にとっても喫緊のテーマだ。大きな予算を割いて教育研修を行っている企業も少なくない。それに対してアソシエイトディレクターの榊巻亮氏は、「座学だけでは人を育てるのは難しい。かと言って、プロジェクトに参加させるだけで育つものでもありません。プロジェクトを通じて人材を育成できる仕組みが必要です。当社には、そのノウハウやメソドロジー(方法論)があります。キーワードで示すとすれば、『感情/理論/お手本/チャレンジ/振り返り』です」と話す。

アソシエイトディレクター 榊巻 亮 氏

「感情」とは、プロジェクトに対しておもしろそう、やってみたいと思わせることを指す。そのうえで方法論としての「理論」を理解させる。さらに、コンサルタントとして「お手本」を見せながら、社員に自分で「チャレンジ」させるという。特筆すべきは「振り返り」だろう。ケンブリッジでは、プロジェクトのさまざまな場面での「振り返り」を重視している。プロジェクトの成果の検証はもちろんのこと、定例の会議などについても、その終了後に「会議の場で何ができ、何ができなかったか」を振り返り、必要に応じて次の策を講じたり、軌道修正をしたりするという。「時には、一日のうちで2時間ごとに資料を書き直すこともあります」(榊巻氏)というから念が入っている。

白川氏も「こうしたことができるのは、当社のサービスが、コンサルタントが顧客企業に常駐して行うことを前提としているからにほかなりません」と加える。顧客企業のプロジェクト・メンバーと、文字どおり机を並べることで、単に会議の場だけでなく、そこで使われる提案書の作成や、その前提となる情報収集、意見調整などを行っている姿を見てもらうのである。榊巻氏は、「日本企業では、会議の席で意見を言わないのに、後で文句を言う人もいます。

そんな人を追いかけて、喫煙ルームで話を聞くこともあります」と話す。顧客企業の社員は、こうしたプロジェクト運営のディテールを目の当たりにし、事業推進の機微を学んでいく。