NTT法の見直しをめぐり競合3社と激しくバトルしている(写真:AP/アフロ)

NTTの役割を規定する「NTT法」を巡り、NTTとKDDIやソフトバンクなど競合他社が激しい議論を繰り広げています。政府は2024年3月1日にNTTに課している研究成果の開示義務をなくすなどの改正案を閣議決定しましたが、外資規制や電話のユニバーサルサービスの見直しなど「NTT法」を巡る重要な議題は2025年の通常国会に向けて今後も議論が進められます。そもそもなぜ今「NTT法」が話題となっているのか、やさしく解説します。

政府が株式3割超保有、防衛財源確保が発端

 NTT法とは、国内大手通信会社NTTが持つ特別な役割を規定した法律のことです。正式には「日本電信電話株式会社等に関する法律」のことで、1985年に日本電信電話公社(電電公社)が現在のNTT(日本電信電話株式会社)」へ民営化するのに伴い、成立しました。

 NTT法は、持ち株会社のNTTと地域会社であるNTT東日本・NTT西日本を対象とし、政府がNTTの発行済み株式の3分の1以上を保有しなければならないと定めています。国民生活を支える通信のユニバーサルサービスの提供と電気通信分野の研究開発という2つの責務をNTTに課し、これを担保するために多くの制約をNTTに設けています。

 今回のNTT法に関連する議論は、防衛費増額に伴う財源を確保するための増税以外の選択肢として、政府が保有するNTT株式を売却する案が2023年6月に自民党から出てきたのが始まりです。政府はNTTの発行済み株式総数の34.70%(2023年12月時点、実質的には33.33%)を保有し、保有株の時価は約5兆円に上ります。

 ただ、当初から防衛費確保の意義以外の背景も主張されてきました。自民党の萩生田光一政調会長は「通信手段が高度化、多様化し国際競争も激しくなっている中で義務を維持し続けるのかどうか検討する必要がある」と発言しています。自民党で「NTT法の在り方に関するプロジェクトチーム」(座長は甘利明前幹事長)が発足し、2023年8月からNTT法に関する議論が始まりました。