スペースXは2019年5月にスターリンクの60基の衛星を打ち上げることに成功した(提供:SpaceX/UPI/アフロ)

2024年年始に起きた能登半島地震の被災地で、米スペースXの衛星通信による高速インターネットサービス「スターリンク」が通信確保の一翼を担っています。「スターリンク」はウクライナなど紛争地でも通信の生命線となっています。地球上のどこでも通信を可能にしていく低軌道衛星には米アマゾン・ドット・コムや中国なども熱視線を送っています。低軌道衛星で世界のトップを走る「スターリンク」とはそもそも何か、やさしく解説します。(JBpress)

スペースX、地球の近くに5000基の衛星を打ち上げ

「スターリンク」とは、米国の宇宙事業会社Space X(スペースX)が手がける人工衛星による通信サービスです。スペースXは電気自動車(EV)のテスラやSNSのX(旧Twitter)などを経営する米起業家イーロン・マスク氏が2002年に立ち上げました。スペースXはロケットの開発や打ち上げ、宇宙探索や宇宙飛行、国家安全保障の支援などの事業を手掛けていますが、一般消費者に最も近い事業が衛星通信サービスのスターリンクです。

Tモバイルとの提携を発表するスペースXのイーロン・マスク氏=2022年8月撮影(写真:ロイター/アフロ)

 スターリンクのインターネットサービスは、30〜50センチメートルのアンテナを空が見える場所に設置すれば、地球上どこでも簡単にWi-Fi環境を構築することができます。スターリンクは能登半島地震の避難所で活用されているほか、ロシアからの軍事侵攻を受けるウクライナでも通信確保の一翼を担っていることで注目されています。マスク氏は昨年11月、ガザ地区とイスラエル国内でスターリンクを提供することでイスラエル政府と合意しています。

 これまでも衛星通信はありましたが、スターリンクが従来と異なるのは、衛星の高度と数です。通常の静止衛星は高度約3万6000キロメートルの軌道上にありますが、スターリンクは約65分の1にあたる高度約550キロメートルの低軌道上に位置しています。地球との距離が近いため、低遅延での通信環境を地上で提供することができます。

スターリンクの衛星を打ち上げるスペースXのロケット「ファルコン9」=2023年8月(写真:UPI/アフロ)

 通常、低軌道の衛星は地上でのカバー範囲が狭くなってしまいますが、スターリンクは桁違いに多くの衛星を打ち上げることで、幅広い地域で高速・低遅延の通信を実現しています。例えば、代表的な静止衛星通信の「インマルサット」は4基、スターリンクと同じ分野の低軌道周回衛星(高度780キロメートル)を使う「イリジウム」でも66基で運用しています。一方、スターリンクのスペースXはすでに約5000基の衛星を打ち上げており、将来的には4万2000基の体制を予定しています。

出所:KDDIや総務省の資料などを基に作成

 スペースXは自社で小型化したロケットの開発・製造をしています。ロケットの機体が自力で地上に戻ってくる仕組みを使い、ロケットの再利用も可能にしました。従来の使いきりに比べ、次の打ち上げまでの時間やコストを削減し、多くの衛星を宇宙に運ぶことを可能にしています。