肥満症治療薬「ウゴービ」を注射する女性(写真:ロイター/アフロ)

欧米を中心に減量効果の高い「痩せ薬」とも言われる薬が急速に普及しています。日本でも2024年2月に保険適用の肥満症治療薬としては30年ぶりの新薬「ウゴービ」が発売されました。一方、大正製薬が4月に内臓脂肪を減らす薬を発売するなど、肥満の改善を狙った薬の開発競争が激しくなっています。株式市場でも注目を集めるなか、そもそもどんな企業が参入しているのか、やさしく解説します。

保険適用の肥満症薬、約30年ぶりの新薬

 日本で1992年の「マジンドール」以来となる保険適用の肥満症治療薬が2月に発売されました。新たに発売された肥満治療薬「ウゴービ」は、週1回の注射で投与されます。「GLP-1受容体作動薬」に分類される薬で、糖尿病の治療薬を転用して作られました。

「ウゴービ」は脳の満腹中枢に働きかけ空腹感を軽減し、食事の量を減らして体重を減らす働きがあります。日本人を対象とした臨床試験では、週1回投与した結果68週間後に平均13%の減量効果がありました。「ウゴービ」の価格は最大容量2.4ミリグラムの投与で1カ月約4万円です。

肥満症治療薬「ウゴービ」はデンマークの製薬大手ノボノルディスクが手がける(写真:ロイター/アフロ)

「ウゴービ」を開発したのがデンマークの製薬大手ノボノルディスクです。ノボノルディスクは1923年にインスリンの生産からスタートした企業で、糖尿病や肥満症治療などを中心に事業を拡大。現在では世界に16の生産拠点、10の研究開発拠点を持ち、世界170カ国で製品を展開しています。

「ウゴービ」は2021年に肥満症治療薬として米国で実用化され、2023年7月にはドイツ、同年9月には英国などでも販売を拡大。2024年2月にはアジアで初めて日本でも展開を始めました。米国を中心に爆発的な需要に供給が追いついていない状況となっています。

 旺盛な需要を背景に、ノボノルディスクの2023年12月期の売上高は前年比31%増の2322億クローネ(約5兆円)、純利益は51%増の836億クローネと好調な業績を記録。2024年1月末には時価総額が一時5000億ドル(約75兆円)を突破し、欧州企業として仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンに次いで2番目に5000億ドルの大台を超えました