衆院本会議で答弁する岸田首相=4月18日(写真:共同通信社)衆院本会議で答弁する岸田首相=4月18日(写真:共同通信社)
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【この記事のポイント】

●国会で、政治資金改革にようやく焦点が当たり始めた。政権・与党は今国会で政治資金規正法を改正する道筋を描く。

●細川内閣で首相秘書官を務め、平成の政治改革に携わった成田憲彦・駿河台大名誉教授は「今国会で」と成立を急ぐ岸田首相の姿勢に、自民党の魂胆が見えると指摘する。

●本腰を入れて取り組むべき改革は何か。浮上している連座制や第三者監督機関の必要性はどう見るか。成田氏に聞いた。(JBpress)

【前編から読む】
◎岸田首相は本当に二階氏に「重い処分」を下せるのか?幕引き図る大規模処分は新たな火種に

魂胆が透ける、極めて小さなスケール感

――裏金事件を受けた政治資金規正法改正に向け、国会がようやく動き出します。岸田首相は「今国会(6月23日会期末)で結果を出さなければならない」としていますが、どこに注目していますか。

成田憲彦・元首相秘書官(以下、成田氏):まず、そもそも「今国会で」というところです。要するに、問題を小さく小さくしようとしているということです。政治改革はそんな小手先で済む問題ではありません。

 平成の政治改革は6年かかりました。その間に5つの内閣がかかわり、そのために2つの内閣がつぶれています。それくらいのスケールの問題です。

 それを「今国会で」なんていうのは、あまりに残念でみみっちい。できるだけこの問題を小さくして、早く終わらせてしまいたいと。そういう自民党の魂胆が見え見えです。

 そうした手っ取り早い法改正の手法として、「政治倫理・公選法改正特別委員会」(倫選特)を改組した「政治改革特別委員会」で議論していくことになりました。委員会で法案をまとめて提出する委員会立法という形式が考えられますが、これは極めてスケールが小さい。

 日本の国会において、委員会立法は最も透明性の低い立法形態だと言ってもいいでしょう。委員会が法案をまとめ、委員長が提出者になって成立させる形態ですが、その実態はというと、理事が中心になって決める。理事と言っても、与野党それぞれ1人ずつの筆頭理事による筆頭間協議が中心です。

 理事の構成で言っても少数野党まですべて網羅されているわけではありません。筆頭同士の話し合いとなれば自民と立憲の理事同士で終わりです。

 委員会立法が不透明だと言ったのは、こうした理事同士、筆頭同士でどういう協議が行われたのか、まったく表に出てこないからです。

 突如協議がまとまったと言って、委員会で法案の趣旨説明がなされ、委員会採決される。その後、本会議で討論もされず通っちゃう。質疑がないから、会議録を見たって中身は何もわかりません。

 メディアの報道はあるでしょうが、会議録という公式の記録では残らないのです。

――平成の政治改革はどのように進んだのでしょうか。

成田憲彦(なりた・のりひこ)氏:1946年生まれ。駿河台大学名誉教授(政治制度論)。政治改革を進めた細川内閣で首相秘書官。野田内閣では内閣官房参与として官邸のブレーン役を務めた(写真:共同通信社)成田憲彦(なりた・のりひこ)氏:1946年生まれ。駿河台大学名誉教授(政治制度論)。政治改革を進めた細川内閣で首相秘書官。野田内閣では内閣官房参与として官邸のブレーン役を務めた(写真:共同通信社)
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