1.ウクライナ軍の防御に突破口形成の危機
戦闘様相を局地的に見ると、東部戦線のウクライナ地上軍のいくつかの防御陣地で、突破口が形成されそうな危機が迫っている。
というのも、十分な弾薬や必要な武器が前線に到着しない間、ロシアは戦勝記念日までに何としても戦果を挙げたいからだ。
2.両軍の地上作戦全般と東部戦線の概観
両地上軍の攻防全般と東部戦線の攻防の実態はどうなのか。
ウクライナ軍の反転攻勢が止まり、ロシア地上軍はウクライナ軍と対峙する中で、北部から西部にわたる全線において攻撃を行っている。
米国の戦争研究所(ISW)が作成した「Russia's Invasion of Ukraine」の地図のロシア軍占拠地域の変化を概観すると、大きな変化はないように見える(図1参照)。
その戦闘様相の強度と要領によって区分すると、
A:戦力を集中して突破を目指して攻撃する地域(主攻撃)、
B:その地にもともと配分された戦力で攻撃し、できれば地域を獲得する狙いで攻撃する地域(助攻撃)、
C:少ない戦力でウクライナ軍の防御部隊を引き付け転用させない地域(助攻撃)、
D:威力偵察または渡河作戦を妨害する地域の4つがある。
図1 ウクライナの領土とロシアの占拠地域の変化
その中でも、ウクライナにとって厳しい局面にあるのは、ロシア軍が戦力を集中して突破を目指して攻撃する東部戦線の戦闘である。
特に北から、
①東部戦線の東部バフムトのチャシウ・ヤール、
②東部ドネツク方面北側のアウディウカからオチャレティネ、
③ドネツク方面南側のマリンカからパラスゴィウカの地域である。
ロシア軍はこの地域に最も多くの戦力を集中し、次から次へ戦力を投入し、絶え間ない攻撃を実施している。
この地域では、戦闘行動としてどのような戦いが行われているのか、 また戦況推移の状況はどうなのか、そしてウクライナ軍はどのような思いで戦っているのかを考察する。