“交通違反を取り締まる機関がない”状態

成田氏:まず、各政党が入った政治改革協議会というものを作りました。座長は自民党幹事長です。野党の方も、幹事長・書記長クラスが入ります。

 ここで大きな枠組みを話して、実務者会議の場で調整します。この実務者会議の座長は自民党政調会長で、野党各党の政調会長もこの場に入りました。

 海部内閣で発足し、実質的審議は宮沢内閣で行われましたが、最終的に21項目の緊急政治改革をまとめました。現在のパーティー券規制の内容は大体ここで決められました。

 そのほか平成の政治改革では、有識者による選挙制度審議会を発足させ、その答申を受けて政府法案を提出したり、野党も共同で法案を提出したりと大掛かりな態勢で取り組みが行われました。

 しかしそれでも実現できず、結局宮沢内閣の不信任案が可決され、政治改革政権としての細川内閣が成立しました。権力構造の転換があってはじめて、大規模な改革ができたわけです。

 それを、倫選特をちょっといじった委員会で議論し、今国会で成立だなんていうのは、さっさと片付けようというのが見え透いています。委員会立法で大きな改革ができるわけがない。国民を納得させるような改革なんてできません。

――改革の中身はどうでしょうか。本腰を入れて取り組むべき課題はどんなものが考えられますか。

成田氏:最も大切なのは、行政監督機関の設置です。メディアや政党などは「第三者機関」と言っていますが、政治資金における第三者というといま一つよくわかりません。

 会社や団体での不祥事の調査などを行う第三者機関は、現場と経営部門以外の外部の機関という意味ですが、政治資金問題で第三者機関と言われているのは、正確にいえば政治資金を監督する行政機関のことです。

 政治を行政機関が監督するのかと言われるかもしれませんが、政治を丸ごと監督するわけではなく、例えば選挙の執行における違反を警察が監視、監督し、取り締まっているのと同じです。

 岸田さんは「政治活動の自由」ということを盛んに言っていますが、そもそも日本の政治資金規正法は政治活動を極端に重視した仕組みになっています。「そこのけ、そこのけ“政治活動の自由”が通る」という状態です。

 あるいは、元首相の選挙演説にヤジを飛ばした聴衆が警察に排除されるような状況を見れば、「政治活動の自由」でなく「政治家の自由」なのかもしれません。

 政治活動の自由と国民の知る権利とのバランスを取ると岸田さんは言いますが、政治活動の自由とバランスする相手は、そんな国民の権利の一部ではありません。主権者国民の主権の行使とバランスを取るべきです。

 そういう考えのもとで、ではいま何が具体的に問題かと言えば、違反を取り締まる行政機関がないということです。

 ビッグモーターが違反をした際には、国土交通省が立ち入り調査をしました。銀行や保険会社が不正をすれば、金融庁が立ち入り調査をします。

 ですが、政治資金の違反が疑われる事案があっても、立ち入り調査をする行政機関がありません。

 私は比喩的に、日本の政治資金規正制度は「道路交通法があって、交通違反を取り締まる機関がない状態」だと言っています。