NTT法のあり方を巡る主な論点は?

 NTTの完全民営化に向けた議論は、NTTが再編成した1990年代など過去にも起きていました。1996年の電気通信審議会の答申の中で、NTT東西についても「地域通信市場における競争の進展状況に応じて最終的には完全民営化」などと表現されました。

 さらに2010年代には、当時の原口一博総務相が「ガリバーが手足を縛られチャンスを逃している」と述べ、政府によるNTT株式売却や規制緩和を検討する機運も高まるタイミングもありました。

 ただNTT法廃止に向けた本格的な議論には至っていませんでした。

(図:NTTKDDIなどの資料を基にJBpress作成)
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 今回のNTT法のあり方に関する議論の主な論点としては、NTTによる研究開発の開示義務や固定電話のユニバーサルサービスのあり方、外資規制などが挙げられています。

 NTT法では、電気通信分野の研究開発の推進や普及の責務として、NTTに研究成果の開示義務を課しています。一方、光通信基盤「IOWN(アイオン)」の研究開発などを進めるNTTにとっては「研究開発をパートナーと連携して展開していくうえで、経済安全保障及び国際競争力強化の支障となる」とし、撤廃を主張してきました。

 また国民生活に不可欠な通信サービスとする固定電話のユニバーサルサービスについて、NTTは「音声・データ通信を固定・無線・衛星等を用いて各地域に最も適した方法で最も適した事業主体が担うべき」と主張。

 これに対してKDDIやソフトバンク、楽天モバイルの競合他社は「地方等の条件不利地域におけるサービス維持が出来なくなる」との懸念を示し、NTTが引き続き担うべきだと反発しています。

 固定電話の全国一律サービスの必要性に疑問符を付ける指摘もあります。足元で国内の携帯電話の契約数は2億件を超えている一方、NTT東西が提供する固定電話の契約数は減少の一途をたどり、2023年3月には1354万件まで減少しています。

 NTTにとっては、全国にくまなく通信インフラを提供・維持するコストが収益を圧迫する状況が続いています。