日本の缶詰第一号、イワシは謎に満ちた魚だった

「弱」をつけられた魚の値打ち(前篇)

2018.07.13(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

漁獲量大変動の原因は見えてきたものの・・・

 漁を営む人びとにとって、イワシは漁獲量の大きく変わる魚として知られている。その変動は長く、激しい。16世紀半ばには、すでに千葉の銚子などの漁港で漁果の記録がとられており、それらによるとおよそ4世紀半の間に、10年から長いときは50年以上にわたる不漁期が5度、逆に同じくらいの規模の豊漁期が6度あったという。

 1864(元治元)年には、未曽有の豊漁となり、銚子では「いつ来てみても干鰯場はあき間もすき間も更になし」と「銚子大漁節」が歌われたほどだ。だが、1873年(明治6年)に入ると不漁となり、それが1920(大正9)年まで続いた。

 近年では、マイワシについては1988(昭和63)年の漁獲量450万トンという豊漁から、急激に漁獲量が減り2005(平成17)年には150分の1の約3万トンにまで落ち込んでいた。だが、スルメイカやサンマなどの不漁が続く中、2017年ごろからイワシに限っては豊漁に転じている。

 イワシの漁獲量を巡っては、1980年代序盤まで、乱獲による均衡の崩れが原因ではないかとされてきた。だが、1983(昭和58)年、国連食糧農業機関(FAO)の会議で「生態系の構造転換」あるいは「レジームシフト」と呼ばれる地球規模の基本構造の転換が生じており、これがイワシをはじめ多くの魚類の漁獲量の変動の主要因といわれるようになった。

 こうした理論により、大きな傾向は把握できるようになった。だが、地球の海洋上のどの辺りに、イワシがどれだけ生息しており、そのイワシはどのような環境を過ごしてきたのかといったことは解明されていない。解明が進めば、データという根拠をもとにした持続可能な漁が可能になるはずだ。

 では、どうすればイワシなどの魚類の生態解明に近づけるのだろうか。後篇では、日本の研究者による取り組みを伝えたい。キーワードは「耳石」だ。

後編へ続く)

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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