東日本大震災のような大きな災害が起きたとき、電話や携帯電話がつながらず被災地がパニック状態に陥ることは、地震や台風など自然災害が特に多い日本では、これまで何度も経験してきた。そうした状況はできる限り避けたいが、不幸にも同じことが繰り返されている。
災害とは離れられない日本だから生まれた技術
その理由は、私たちが使っている通信システムが非常に品質が高く使い勝手が良い半面、災害などで何らかの不具合が生じた場合には、システム全体がダウンしやすいという特徴があるからだ。
例えば、電話や携帯電話の基地局が被害を受けてしまうと一切情報をやり取りすることができなくなる。また基地局がかろうじて被害を免れても一度に大量のアクセスがあるとやはり通信ができなってしまう。
こうした状況を何とか改善できないものか。
必要は発明の母と言えるのだろう。世界でも地震や台風などの災害が特に多い日本だからこその、新しい通信システムが生まれようとしている。
トヨタ自動車の子会社であるトヨタIT開発センター(本社東京都港区)と総務省、そして総務省傘下の研究機関であるNICTが共同で、テレビ放送の空きチャンネルを使って災害時にも通信が可能になるシステムを開発したのだ。
実用化されれば、大きな被害を受けて電話や携帯電話が一切通じないような地域でも、音声メッセージや電子メールを送受信できるようになるという。
具体的にはIT化されたクルマを媒体として通信を行う。動かせる自動車があれば、まず携帯電話やタブレット端末からその自動車とWiFiを使って通信を行い、メールや音声メッセージをを送る。
それらの情報を受け取った自動車は、市町村などが所有するテレビ電波の周波数を使った通信ができる大型の自動車の近くまで走行して向かい、同じくWiFiを使って情報をやり取りする。
乗用車から情報を受け取った大型自動車は、テレビ放送の空いている周波数を自動的に探して、その周波数に乗せて被災地から遠く離れた場所と通信を行う。