(英エコノミスト誌 2013年10月12日号)

中国では河川が消えつつある。運河の建設はその解決にはならない。

 中国の皇帝は、水に対する支配を国を統治する最も重要な方法の1つと考えていた。そして、西暦500年頃に完成した、北京と杭州を結ぶ京杭大運河のような壮大なプロジェクトに王朝の資源をつぎ込んだ。

 中国共産党の指導者はこの情熱を受け継いだ。1代前の中国共産党中央政治局常務委員会は、9人の委員のうち8人がエンジニア出身で、前国家主席の胡錦濤氏は水力工学のエンジニアだった。中国が建設した大規模ダムの数は中国以外の全世界合計に匹敵する。

国の存続をも脅かす深刻な水不足

中国の川で魚が大量死、当局はアンモニアが原因と発表

今年9月には中国・湖北省の武漢にある川で、大量の死んだ魚が川面に浮いているのが見つかり、地元の人々が死骸の回収作業に追われた。〔AFPBB News

 京杭大運河は今、世界に類を見ないような史上最大級の土木プロジェクトの結合部を形成している。プロジェクトの第1期は今年末までに稼働する予定で、その計画は「南水北調工程」という冴えない名前で通っている。

 仮に南水北調が完成することがあれば、総工費500億ドル以上を費やし、南の揚子江から北の黄河まで、一部はヒマラヤ山脈の高地を通る全長2000マイル(3218キロ)の新運河で水を運ぶことになる。

 中国で最近見られる一部の行き過ぎたインフラ計画とは異なり、水路を迂回させるプロジェクトは深刻な問題に対応するものだ。中国では危機的なまでに水が不足しているのだ。

 南部は青々とした湖がいっぱいの地域だが、中国の人口の半数が暮らし、大半の農地を擁する北部はむしろ砂漠のようだ。「水ストレス」の国際的な定義は、利用可能な水の量が1人当たり年間1000立方メートルとされる。中国北部に住む人の平均値は、その2割以下だ。

 中国の人口は世界の2割を占めているが、世界の淡水の7%しか持たない。前首相の温家宝氏はかつて、水不足は「中国国家の存続そのもの」を脅かすと述べていた。

 水不足は中国国内の水が消えつつあるために、さらに悪化している。1950年代には、集水面積が100平方キロ以上の河川が5万本あった。それが今では2万3000本まで減った。主に農家や工場による乱用の結果として、中国は2万7000本もの河川を失ったわけだ。