今週東南アジアでAPEC首脳会議と東アジア・サミットという2つの重要国際会議が開かれた。興味深いことに、内外マスコミの中国外交に対する評価は大きく2つに割れた。今回は、いくつかの関連報道を検証しながら、なぜ我々が「中国の実態を読み誤るか」について、筆者の問題意識をご紹介したい。
孤立化深める中国外交?
ある経験豊かな日本人ビジネスマンが中国外交についてこう書いている。「なぜか日本のマスコミ報道ではあまり目にしませんが、欧米やアジア主要国では『中国の孤立化が始まった』との記事をよく見かけるようになっています」。
似たような記事はもう1つあった。「『なぜ日本は孤立しているのか』とジョン・ケリー国務長官に問われたジョージ・W・ブッシュ政権の元高官は、『孤立を恐れているのは、むしろ当の中国なのだ』と解説を加えた」のだという。
なるほど、そうか! 面白そうなので早速調べてみたが、何と結果は意外なものだった。
インターネットの検索機能を駆使し、「中国の孤立化」に関する記事を何回も探してみたが、英語でも、日本語でも該当記事はヒットしない。最近の中国の対日、対フィリピン外交が露骨な「孤立化政策」だとする記事はあったが、中国自体の「孤立化」を取り上げた記事はどうしても見つからなかった。
存在感を高める中国外交?
欧米では「孤立化」よりも、中国の「存在感」の高まりを懸念する記事の方が目についた。例えば、バラク・オバマ大統領が議会との「内戦」を理由に欠席したAPEC首脳会議について、中国の影響力増大に焦点を当てた記事が少なくない。例えば、ニューヨーク・タイムズではこんな具合である。
●(オバマ欠席により)より大規模な経済統合を見据えた会議で中国の習近平総書記が主導的な役割を果たすリーダーとして浮上した(leaving China’s president, Xi Jinping, as the dominant leader at a gathering devoted to achieving greater economic integration.)
●オバマ大統領の欠席は、中国のより強力なプレゼンスにより経済が拡大しつつあるインドネシアでの米国の国益にとって特に悪影響が大きい(Mr. Obama's absence was particularly damaging to American interests here in Indonesia, where the growing economy has been bolstered by a stronger Chinese presence)
ワシントン・ポストでも似たような論評を見かけた。
●(国連総会などで)米国と投票行動を共にしない国々ほど、実際には中国と投票行動を共にしている。つまり、中国が友人をつくる中で、米国はより孤独になっている。中国が台頭すればするほど、米国はより孤立化するということだ。(We findthat the countries voting less with the U.S. are actually voting more with China. In other words, while the U.S. is getting lonelier, China is making friends. As China rises, the U.S. will find itself a whole lot lonelier.)