集英社がアベノミクスに関する新刊本を出版した。と言ってもエコノミストや経済評論家のいわゆる“専門家”が書いた本ではない。ごく一般的な日本人の、それも若い女性の目線でとらえると「アベノミクスはこう見えるんですよ」という内容である。

若い女性の目に映ったアベノミクスとは

今週のランキング
順位 タイトル
1 米国の諜報活動では、日本は最大敵国の1つ
2 均一性のNECと一点突破の日立
3 中国が世界を買い占めない理由
4 長い停滞の入り口に立った中国
5 規制強化で身体障害者の数が足りなくなった日本
6 新疆ウイグル自治区で中東型ジハードが始まる日
7 中国が世界の信頼を取り戻すたった1つの方法
8 実際に起こり得る「自由vs民主主義」の戦い
9 サムスン電子、最高業績でも株価続落の憂鬱
10 CVTへの強烈なアンチテーゼ?独ZFの新型トランスミッション「9HP」の洗練ぶり
11 地方政府から火がつく中国版サブプライム危機
12 中国人留学生:海亀族の苦境
13 民主党政権の大失態に学んだ日本外交
14 中国の景気減速でドイツに大打撃
15 中国経済ハードランディングのリスク
16 辛坊さん救助の自衛隊員、危険手当はいくら?
17 3歳の子供を連れて福島に帰る決意をした理由
18 イスラムと民主主義と軍:エジプトの悲劇
19 どん底への競争を繰り広げる欧州自動車メーカー
20 中国人の「財テク」失敗事情

 タイトルは『デフレ脳からインフレ脳へ』。著者は元日経ラジオ社のキャスター、鈴木ともみさん。現在もマーケット関連のキャスターを続けているので、全くの素人というわけではないものの、庶民の感覚が斬新な本である。

 参院選挙はアベノミクスが最大の争点になっているという。ではアベノミクスとはその正体が何で、どんな問題点があるのかを知らなければ投票はできない。

 賛成派と懐疑派がそれぞれ多数の書籍をだろうが、この本は、中立な立場でかつ「素人」であることを武器(「女性」もかな)に、日本を代表するエコノミストに徹底的に取材して作っているので、とても分かりやすい。

 著者の鈴木さんがこの本を出版しようと思ったそもそもの理由は、「前の野田佳彦首相が衆院の解散を宣言したあとすぐに、マーケットでは突然のように大きな動きが始まりました。これはいったい何だろうと思った」ことだと言う。

 「まだアベノミクスという言葉が誕生する前でしたから、えぇぇ・・・という感じで。私が社会人になって経験したことのないような変化が始まり出したと思ったのです」

 若い鈴木さんはもちろん、バブル後入社。社会人として高度成長時代の日本はもちろん、インフレさえも知らない世代だ。

 「デフレ脳からインフレ脳へ」というタイトルも、素直に自分の経験からつけられている。日本銀行の岩田規久男・副総裁など日本を代表するエコノミストに取材する中で、「自分たちの発想がデフレ的になってしまっていた事実に衝撃を受けた」からだと言う。