「中国人の財テク」と聞いて皆さんは何を連想するだろうか。目を見張る経済成長を成し遂げた中国のこと、札束を積み上げてニンマリとほくそ笑む勝者が大勢いるに違いない。そうイメージしている人も多いのではないか。

 だが、すべての中国人が商売や財テクの勝ち組であるとは限らない。そんなラッキーな人は中国でもほんの一握りに限られている。むしろ今中国では国民の大半が大損を抱えて悶々としているのが現状である。

 例えば、2007年に光大銀行が発行した財テク商品「同享二号」は、およそ30%の元本割れである。当時、10万元でこの商品を買った顧客は3万元が消えてなくなった。

 また中国工商銀行が発行した「2007年第1期基金股票双重精選人民元理財産品」は、中国の銀行の中で最も損失が大きい商品だ。これは2007年11月に100億元を募集した財テク商品で、2013年1月時点で44%の損失を出している。

 招商銀行では、2009年に売り出された財テク商品が償還を迎えたが、元本の20万元が13万元に目減りした。怒った顧客が武漢市の支店前でメガホンを持って大騒ぎするという一幕があった。

株式から財テク商品へ

 中国語で「理財商品」と言われる財テク商品は、上海では魅惑的な響きを持って一般大衆に広く受け入れられている。財テクもまた1つの自慢話。食事会などの席では「いまどき、財テクは常識だよね」とばかりに、投資話に花が咲く。

2007年に上海で開催された財テク商品説明会。多くの人が詰めかけ大盛況だった

 中国で大衆の財テクといえば株式投資がその花形だった。2000年代の驚異的な経済成長を受け、上海株は空前の株式投資ブームをもたらした。富裕層は本業そっちのけでのめりこみ、世界中からホットマネーが集中した。一般庶民もなけなしの資金を株式に投じた。

 しかし、2007年10月16日、上海株は6124ポイントの史上最高記録に到達したが、その直後に急落し、株式市場に翳りが見え始める。10月22日、上海総合指数は3カ月ぶりに5000ポイントを割り、11月に入ると同指数は18%下落した。

 株価がピークに達してから1カ月後の11月17日、上海で「第5回理財博覧会(財テク見本市)」が開催された。殺到したのは、下落し始めた株式相場に不安を覚えた個人投資家だった。主にサラリーマンやOL、そして年金生活者を含む一般生活者たちである。見本市とはいえ、入り口では、10元(当時約160円)の入場料を課金する。それすら払えない初老の男性がムリヤリ侵入しようとして警備員と揉みあいになる一幕もあった。