(英エコノミスト誌 2013年7月6日号)

海外留学から戻ってくる学生は現代中国の発展を支えてきた。では、今なぜ彼らは労働市場で憂き目に遭っているのだろうか?

 「私は1980年にポケットに3ドルしか持たずに中国を出た」。こう振り返るのは李三琦氏。文化大革命の暗い時代の後、海外で学ぶことを許された最初の留学組の1人だ。

 このエリート集団の大半がそうであるように、李氏も優れた成績を収め、複数のハイテク企業を起業しながら、テキサス大学で誰もが望む地位に上り詰めた。そして世界に通用する多国籍企業の創設・育成に携わるチャンスに引かれて帰国し、現在、中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の役員を務めている。

 李氏は「海亀(ハイグイ)」(北京語では「海帰=海外から戻ってくる」という語句の発音が、海亀の発音と似ている)の見本のように思える。海亀族は中国で長年、先端技術を持ち帰ることで称賛され、確実に国内の労働市場で相場を大幅に上回る報酬を得ていたが、もはや、そうではなくなった。

エリート集団だった海亀族、今や就職もままならず

 海亀族が押しなべて称賛されるようなことはなく、賃金格差も縮まり、就職できない人さえいる。今は海亀族を「海帯(ハイダイ、昆布の意)」と呼ぶべきだと陰口を叩く向きもある。海亀族の過去の貢献を考えると、驚くべき変わりようだ。

 中国の帰国留学生団体で、今年創立100周年を迎える欧美同学会の王輝耀氏は、海亀族の帰国には5つの波があったと言う。

 19世紀の最初の波は、中国初の鉄道建設業者や最初の大学総長を生んだ。1949年以前の2番目と3番目の波は、中国国民党と中国共産党の多くの指導者を輩出した。1950年代にソ連圏に留学した4番目の波は、江沢民や李鵬のような指導者を生み出した。

 現在の波は1978年に始まり、断トツに大きな波になっている。1978年以降、約260万人の中国人が海外に留学した。海外への大量脱出は最近一段と増え、年間約40万人に達している。留学生の過半数は外国にとどまるが、帰国した110万人は中国に変化をもたらしてきた。

 王氏は、最初の3つの波が中国に大変革をもたらし、4番目の波が国を近代化させたのに対し、5番目の波は中国をグローバル化させていると論じている。