トランスミッションから駆動系全般、ダンパーやステアリングなどサスペンション関係など走行機能要素を幅広く手がけるサプライヤー(部品メーカー)の独ZFが、その最新技術を紹介し、試乗体験も行う報道関係者向けワークショップを開催。そこに出席してきたので、今回はそこで見聞きし、体験した内容を取り上げることにした。

世界各国から集まった自動車分野のジャーナリストたちがまずはZFの技術ビジョンと最新技術のプレゼンテーションを受ける。この日は日本を含めてアジア・パシフィック地域から集まったメンバーが主体だった。(写真提供:ZF)

 このコラムに書いてきたように、今年はドイツ訪問が続いている。世界の自動車産業のパラダイムが変化している中で、これからの時代をいかに生き抜いてゆくかについて、日本よりも格段に明確なコンセプトを形作り、しかもそれを企業単独としてではなく一国の産業界全体でかなりのところまで意識を共有しつつ現実のものにしようと動いているのが今のドイツなのであって、そこにはきっと日本の明日にとっても参考になることが多々あるはず。そう思って機会があるたびに現地を訪れているのである。

 今回、ZFが世界のジャーナリスト向けに用意した「最新技術群」は、今秋9月に開催されるフランクフルト・モーターショー(正式呼称はIAA:国際自動車展示会)に同社が出展する内容、それも含めて直近の生産車(今回は乗用車のみ)に採用されている、あるいは間もなく導入される走行機能要素がほとんどだった。

 その中からいくつか「これは」と私自身が注目したものをピックアップして紹介してゆこう。

ジャーナリストに向けて総合的なビジョンと、背景に映る9HPをはじめとする技術群の概要を語るZFの経営会議メンバー7人の1人、ミヒャエル・ハンケル工学博士。パワートレインとシャシー全体の責任者でもある。(写真提供:ZF)

オートマチックトランスミッションの技術課題とは

 まず、「エンジンを横置きするレイアウトに対応した9速オートマチックトランスミッション」。ZFでは「9HP」(9速・流体利用発進デバイス、すなわちトルクコンバーターを組み込んだオートマチックトランスミッション)と呼称しているものだ。

 これが2013年末にマイナーチェンジを行うレンジローバー・イヴォークと、2014モデルのジープ・チェロキーに搭載され市場展開が始まることになっており、現行イヴォークで開発を進めている車両そのものが我々の試乗用に用意されていた。