経済成長と経済制度改革の関係は、本来ならば経済成長の各段階に合わせて、順次、関連制度を改革し整備していくべきである。成長が遅れている経済では、どんなに優れている制度を構築しようとしても、思うように機能しないだろう。逆に、経済成長が進んだ国で制度の構築が遅れた場合、経済成長はたちまち阻害されてしまうはずである。

 中国の場合、江沢民政権下で朱鎔基元首相は剛腕を振るって大胆な制度改革を推し進めながら経済成長を図った。結果的に、その後の胡錦濤政権下の10年間で高成長が実現できた。しかし、胡錦濤政権においてはほとんどの改革が先送りされ、今となって、その歪みが問題となって経済成長を妨げている。

 今、中国では家計の貯蓄率が30%を超え、一方、銀行や金融市場では資金が不足していると言われている。これはまったく不可解な現象である。

 上海で開かれている国際金融フォーラムで、尚福林銀行業監督管理委員会主席は、「銀行に流動性がないわけではない。システムに欠陥があるからだ」と問題の存在を認めた。すなわち、金融市場で資金が不足しているのは、資本効率が低いため資本の循環が滞っているからである。

金融機関が地方政府に過剰融資

 国際金融市場では、中国版サブプライムローン危機が起きる可能性について警鐘が鳴らされている。

 アメリカのサブプライムローン危機は次のように発生した。信用力の低い低所得層が返済能力をはるかに上回る金融機関からのローンで住宅を購入した。その住宅価格が下落したことで住宅の担保価値が下がり、貸し手の金融機関のバランスシートに巨額の不良債権が生じたのである。

 それに対して中国の金融システムリスクは、地方政府がその返済能力以上に金融機関から資金を調達したことに端を発している。今となって、地方政府が抱える債務の相当部分は返済不能に陥っている。

 会計検査院にあたる国家審計署の調べによると、全国36地方都市は債務不履行を起こす恐れがあると言われている。すなわち、金融機関などからの借り入れについて元利払いをしていかなければならないが、土地の払い下げの売り上げが成立せず、資金返済が困難になっている。

 共産党一党独裁の中国では、地方政府の破綻は考えにくい。だが、貸し手の金融機関はその債権の一部を回収できず、不良債権になる可能性が高くなる。金融機関の資金は預金者の預金がほとんどであり、最終的に預金者は銀行の不良債権のツケを払うことになる。