この1週間で最も世界を揺るがした話題は何と言ってもキプロスの銀行危機だろう。英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙などの記事で振り返ってみたい。まずは、キプロス危機の影の立役者とも言うべきロシアの側面から。

キプロス問題が火をつけたロシア問題

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 ロシアのコラムを担当してもらっている杉浦史和さんは「キプロス危機でロシア・EU関係が急速に悪化?」の記事で、ロシアサイドからこの問題を分析している。

 杉浦さんは、FT紙が指摘するようなEU内においてドイツが主導してキプロスのいびつな救済シナリオを作った背景には、マグニツキィ事件の影響があると見る。

 マグニツキィ事件とは、ヘッジファンド「エルミタージュ・キャピタル」の顧問弁護士であったセルゲイ・マグニツキィ氏が、同社の不透明な資金の動きおよび脱税に絡んでロシア当局に拘束され、拘留中に亡くなった事件だ。

 米国などでは、ロシア政府高官によるロシア財務省の資金を流用するスキームを暴いたためにマグニツキィ氏は当局から拘束され殺されたと見なしている。

 キプロスの銀行危機は、この事件に再び脚光を当てることになり、キプロスの銀行を救うことはロシアの不正を助けることにつながるため、EUだけでなく米国からも強い批判が出ているというのである。

 キプロスの危機はユーロの屋台骨を揺るがしかねない問題だが、一方でただ単に救済策を講じればロシアの不正を助長しかねない。米国、EUとロシアの間にある深い溝、パンドラの箱を開けてしまったのではないかと懸念する。

 ギリシャで火がつき、スペイン、イタリアへと飛び火しながら一段落を見せていたユーロの危機は、キプロスの登場によって問題が拡大、より一層複雑化してしまった。明るい兆しを見せ始めていた世界経済に大きな波紋を投げかけている。