2004年の第5次拡大によりEU加盟国となったキプロスで経済危機が深刻化し、先週末から銀行預金を封鎖するという異常事態が発生している。キプロス議会はこの措置を不適切として承認しない構えで、混乱はさらに深まる様相だ。
そもそも今回の措置は、窮地に陥ったキプロス政府を救済するためにEUと国際通貨基金(IMF)が協議して100億ユーロの資金援助を行う代わりに、額面10万ユーロ以上の預金を保有している預金者には9.9%、それより少ない預金を保有している場合には6.75%の1回限りの預金税をかけるという条件を政府が受け容れたことによる。
キプロス危機が浮き彫りにしたロシアとの密接な関係
2009年のギリシャ危機で始まった一連のユーロ危機は、ここへ来てEUの中で経済規模では3番目に小さい国にまで及んだことになる。これを受けて、3月18日の東京証券取引所の株価も大きく下げた。
今回の預金封鎖措置は、経営に失敗した銀行の責任を追及すると言うよりは、その銀行を預金先として選んだ預金者に負担を求めるという意味で、それ自体、衝撃的な要素を含んでいるが、同時に我々ロシア執筆陣にとって興味深いのは、今回の措置が、改めてキプロスという地中海に浮かぶ島国とロシアとの関係の深さを反映した点にある。
キプロスでの今回の預金税の導入という措置に対して、遠く離れたロシアにおいてウラジーミル・プーチン大統領もこれを非難する声明を出した。なぜ、キプロスの問題にロシアが反対を表明するのか。
まず今回の事態の経緯を整理しよう。キプロスにおける金融危機が起こった背景は、元はと言えばギリシャにある。よく知られているようにキプロスはギリシャ系住民とトルコ系住民の間の対立がある。
ギリシャ系の銀行は、EU加盟国でありユーロシステムに参加しているギリシャの国債を大量に保有していた。しかしギリシャ危機の進展に伴い同国国債のヘアカットとリスケジュールが行われたことから、キプロスの銀行の大部分はその資産を大きく毀損することになって銀行危機が発生し、今回の経済危機の引き金となったのである。
キプロスは人口87万人、国内総生産(GDP)の規模も170億ユーロ余りとEU全体の0.001%を占めるに過ぎない。また危機が表面化する前の国の対外債務の水準もGDPの61%と、おおむね成長安定化協定の水準にとどまっていた。
ユーロ参加国としては取り立てて優等生ではないが、少なくとも劣等生ではない。そうしたことから、キプロスはEUあるいは世界の国にとってほとんど問題の震源地とはなり得ないはずの国であった。
しかしながら、ギリシャ危機の結果、安全と思われていたギリシャ国債への投資が裏目に出てしまったのである。