ドイツで変なことが起こっている。2月9日、連邦教育大臣のシャヴァーン氏が辞任した。彼女が1980年に書いた博士論文が盗作であると指摘され、去年、母校のデュッセルドルフ大学が調査に入っていた。

 そして、大学は2月5日にその結果を発表し、博士号を剥奪したのである。多くの引用を使いながら、参考文献を明示しなかったというのが剥奪の理由である。

論文盗作をめぐる辞任劇は過去にも

 哲学部の学部長が記者会見で、問題の論文について、「体系的に、故意に、不正を論文全体に分散している。自分の力で作り上げなかった思考上の業績を、自分の物であると偽った」と述べた。

 それも、怯えたような顔で、極悪人を裁くような口調で言ったのだ。そのうえ、論文の調査はこれで終了し、外部の第三者に依頼する必要はないとした。

 一方、シャヴァーン氏はこの決定を認めず、司法の裁断に任せるため、大学を訴えるという声明を出した。博士号の有無よりも信用の問題である。シャヴァーン氏はメルケル政府の重鎮で、アンゲラ・メルケル首相とは特に親しい、よき戦友のような仲だった。

 ただ、どんな判決が出るにせよ、裁判は時間がかかる。ところが、9月には総選挙が控えている。盗作容疑で博士号を剥奪された教育大臣を抱えて選挙運動をするのは、メルケル首相の負荷が大きすぎる。そんなわけで、話し合いの結果、9日にシャヴァーン氏の辞任ということになったのである。

論文盗用疑惑の独教育相が辞任、メルケル政権に打撃

辞任記者会見を行うドイツのシャヴァーン教育相〔AFPBB News

 辞任の記者会見は感動的だった。メルケル首相によって、シャヴァーン氏に対する称賛と謝辞が述べられた。その言葉は温かく、メルケル首相の悔しさがひしひしと伝わってくるものだった。

 シャヴァーン氏の短いスピーチも、決然としていてよかった。自分の正当さを主張したあと、しかし、政府の重荷になることはできないので辞めると、彼女は手短に語った。すべてが辞任劇ではなく、晴れやかな儀式のように見えた。

 実は2011年2月、当時の国防大臣が、同じく博士論文の盗作が原因で退いた。カール=テオドール・ツー・グッテンベルクだ。

 当時39歳、12世紀まで遡ることのできるやんごとなき家柄の出身で、有能で優雅、国民の間に絶大な人気があった。ついでに言えば、夫人は鉄血宰相ビスマルクのひ孫だ。推定資産は約4億ユーロ(450億円)。マスコミは、彼をしてスーパースターと呼んだ。