写真提供:共同通信社
女性活躍から始める人的資本経営』(日本能率協会マネジメントセンター)

 人的資本経営、女性活躍推進・ダイバーシティ推進は、経営者にとって喫緊に対応すべき課題だが、日本では近年なぜここまで女性活躍がクローズアップされるようになってきたのだろうか。そしてこうした取り組みは、企業にとってどのような価値を生み出すのか。

 本連載では『女性活躍から始める人的資本経営 多様性を活かす組織マネジメント』(堀江敦子著/日本能率協会マネジメントセンター)から、内容の一部を抜粋・再編集。女性活躍やダイバーシティと経営戦略をどのように紐づけ、取り組んでいくべきか、先進企業の経営層と著者との対談からヒントを探る。

 第5回では、第4回に続きキリンホールディングスの事例を紹介。2007年に同社で発足した「キリンウイメンズネットワーク(KWN)」のこれまでの取り組み事例から、女性のキャリア構築に必要な視点について考える。

<連載ラインアップ>
第1回 日本IBM社長山口明夫氏に聞く 女性管理職の育成のためのプログラム「W50」とは?
第2回 日本IBM社長山口明夫氏に聞く マネジャーはなぜ社員評価で「前任者との比較」をしないのか
第3回 日本IBM社長山口明夫氏に聞く 女性活躍推進にとどまらない、新しい働き方の追求とは?
第4回 キリンHD副社長坪井純子氏に聞く 被災しても工場は撤退せず、同社が進めるCSV経営とは?
■第5回 キリンHD副社長坪井純子氏に聞く 女性経営職人材が約3倍に増えた「早回しキャリア」とは?(本稿)
■第6回 キリンHD副社長坪井純子氏に聞く なぜ役員1人が社員10人のメンターを務めるのか?(9月19日公開)
■第7回 キリンHD副社長坪井純子氏に聞く 「なりキリンママ・パパ」で試した誰かが抜けても回る仕組みとは(9月26日公開)

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【現場の取組み】
早回しキャリアから役員メンタリングで、プール人材から役員候補までパイプラインを構築

 キリンホールディングスの女性活躍推進の取組みは、2006年にキリン版ポジティブアクションを制定し、2007年に社長(当時)のトップダウンによる女性活躍に必要な施策を経営陣に提言する草の根活動「キリンウイメンズネットワーク」の発足。2009年からはKWN委員会が発足し、社長による経営陣への提案が行われ、「ワークライフバランスサポート休業制度」、「キャリアリターン制度」「転勤回避措置」「育休後・希望地復帰支援制度」など様々な制度が新設されるなど、先進的な取り組みを進めてきました。

坪井:キリンホールディングスが会社として、女性活躍に本気で取り組むという強い意志を示したのは2007年、全女性社員が集合した「キリンウィメンズネットワーク(KWN)」のキックオフの時でした。特に女性は出産を機にキャリアが分断されています。職場に復帰した時にサポートできる体制を整えることと、今後もこの会社で働き続けたいと思われる会社づくりが重要でした。

堀江:2006年に男女雇用機会均等法が改正された翌年ですね。社会的にも女性活躍推進の機運が高まりつつある時期に、経営陣が、全女性社員を招集し、女性だけの全社会議を開かれていらっしゃいましたね。

坪井:それまでは、入社5年目前後の女性総合職の早期離職が課題となっていて、就業継続に向けた取組が中心でした。KWNから女性社員が抱える不安や悩み、さらに課題に対する解決策を直接経営陣に届けるという地道な活動からスタートしました。出産でのブランクがあってもキャリアに復帰しやすい環境づくりを進めていきました。

堀江:御社は、昨今の採用で42%、労働者全体で26%、管理職比率は13.6%(女性活躍データベースより)。各層に対してキャリアワークショップや、キリン・ウィメンズ・カレッジなど、施策を行いながら、パイプラインを構築されています。入社5年の間にブランクがあったとしても働き続けられるキャリアを構築するという取り組みの中で、特に重要視している施策や視点があれば教えてください。

坪井:まず、ジェンダーに対するアンコンシャス・バイアスへの気づきとマインド開発を重要視しました。長期的に見た時に、ダイバーシティの取り組みがどう会社に利益をもたらすのかをマネジメントに理解してもらうところからはじめ、それを会社としてやっていくということを浸透させていきました。