人手不足が叫ばれて久しいが、決定的な打開策は見えない。背景に、不可避とも見える労働人口減があるからだ。企業の人事部門は手を尽くして新たな人材を求め、有能な人材の流出を防ごうと躍起だ。しかし、人事の現場を見続けてきたプロフェッショナルは、別の視点から解決への道を提示する。
人手不足×企業と働き手のミスマッチで
実効的な労働力はさらに低下している
厚生労働省の推計によれば、2017年現在に6530万人だった就業者数は、2025年には448万人減の6082万人、2040年にはなんと1285万人減の5245万人と、この20年間余で1200万人超の働き手が消滅する(同省雇用政策研究会2019年7月26日発表)。
しかし、将来の推測を見るまでもなく、すでに企業現場の人手不足は深刻だ。働き方や雇用形態の多様化などで対応するが、十分な効果をもたらしているとはいえない。また、デジタルテクノロジーの進化や、それに関連して変化する業務内容など、求められるスキルセットが定まらないことも、リソース確保を難しくしている。
働く側の意識の変化も大きい。終身雇用の前提はすでになく、働く側の意識は「企業」への帰属から、「仕事」への参加意識や納得感、満足感へとシフトしている。自分の力を遺憾なく発揮でき、成果を実感できる。そして、適正な評価と報酬が得られる。これを判断基準に、自らに最もフィットするワークスタイルを探し求めている、そんなイメージだ。
企業は「いかに有能な社員を囲い込み、そして長く引き留められるか」、また「現戦力のパフォーマンスをどうしたら最大限に引き出すことができるか」に心を砕いているが、双方の意識はすれ違うことも多く、人材の流動性がいたずらに高まっている感もある。
冒頭のような環境がある中で、こうしたミスマッチは最小限に抑えたい。何が足りないのか。
人事部はバックオフィスにあらず
本来あるべき使命とは
課題解決のカギを握るのは、取りも直さず人事部だ。これまでの人事部の業務はどういうものだろうか。年間人事、給与業務、福利厚生業務、その他事務処理などが思い浮かぶ。人事部は、こうした定例的な業務を処理するバックオフィスというイメージが一般的だろう。
しかし、さまざまな環境の変化、従業員の意識の変化を考えれば、とても従来の領域で収まる業務ではない。今や人事部門は、企業中枢の経営理念、即ち会社の向かうべき方向を理解し、人事制度・給与制度改革、人員計画・採用、組織改編・人員配置計画、社員のキャリアパス計画、人材投資・研修に至るまで、戦略的に関与する存在でなくてはならない。もちろんこれまでの定型業務も行い、「人事戦略の立案・実行」と両輪を成す必要がある。
人事を超える人事
それを支える仕組み
こう聞けば人事部門にも言い分があるだろう。「リソースが限られる中、定型業務だけでも精一杯なのに、その他の業務などこなせない。それに人事戦略などといっても、そもそも会社がどんな方向へ行こうとしているのか共有できていない上、現在の人事や各従業員のステイタスをリアルタイムで把握できなければ、人事戦略の立案・実行などできない」。とすれば、どうすればよいのか。
企業ゴールの明確化と全社への浸透、そして戦略的人事に基づく「タレントマネジメント」実行の重要性を長く説いてきたのは、1995年のリリース以来、累計9000社を超える企業が導入する基幹業務パッケージSuperStream(財務会計・人事給与)を提供し、企業の理想的な人事の在り方に深い知見を持つスーパーストリーム株式会社だ。同社は、企業における人事の在り方を、独自の「バスタブ」理論で説明する。
このモデルを提唱する同社の取締役 企画開発本部長の山田誠氏は「このモデルは、企業のタレントマネジメントそのものを示しています。ただ、私が理想とするタレントマネジメントは、欧米流の短期的な目標管理をベースとしたものではなく、日本の文化に合った、まさに『日本版タレントマネジメント』です」と話す。
取締役 企画開発本部長 山田 誠 氏
図の蛇口から入ってくるのは人材だ。さまざまな人材が企業の求めに応じて入社し、バスタブが満たされていく。いわば採用のプロセスだ。だが、人材は入ってくるばかりではない。さまざまな理由によって企業を去っていく人材もある。それを示すのが排水口だが、企業としては、人材の流出を極力抑えたい。
ただ、こうして「必要と思われる人材を次々に採用する、人材が流出しないように引き留めるといった部分最適の取り組み方では理想には近づかない」と山田氏は言う。必要なのは、どんな人材が、企業が定めるゴールへ向かうために必要なのか、というバスタブ自体の全体設計であると指摘する。
「日本版タレントマネジメント」
を実現する基盤の新しさ
バスタブ、即ち自社の人事の設計に欠かせないのは、どのような人材がどこに配置されているのかを把握すること。いわば「人事の見える化」だ。その上で、その職務やポジションは、そもそもどんな目的のために設定されたのか、そして自社が向かうべき方向性とリンクしているのかといった現状分析と、職務やポジションに対する明確な定義だ。
こうして、(1)現状の人事を把握(見える化)し、(2)自社がどこに向かうのかを把握、必要な職務・ポジションと人材像を定義、(3)企業ゴールに沿った要員計画を策定することが求められる。
しかし、これらは人事部だけが負うべきミッションではない、と山田氏はくぎを刺す。「人事を人事部門だけの責任にせず、経営層、そして現場が一体となって進めるべきです」(山田氏)。どうやらここに「日本版タレントマネジメント」実現のポイントがありそうだ。
実はここまで明らかにしてきたような理想は、これまでまったく認識されていなかったわけではない。ただ、散在していたりデジタルデータ化していなかったりした人事情報を、リアルタイムに、かつ人事およびマネジメント全員が共有できる仕組みがなかったのだ。
あるべき人事部の姿と、その成果としての「日本版タレントマネジメント」を長く説いてきたスーパーストリームは、人事給与シリーズを15年ぶりに大幅刷新、同社が掲げる理想を実現できる基盤として「SuperStream-NX 人事給与」をリリースする。
改善点は枚挙にいとまがないが、例えば「タレントBOX」という機能を取ってみても、新しい人事戦略を支える基盤であることが分かる。この機能では、複数の従業員情報を並べて各人のスキルや経歴を分かりやすく一覧できる。適性にあった人材の配置を考えるとき、基本情報から資格、スキル情報など最大2万項目の情報を管理でき、社員情報管理メニューから簡単に把握できる。こうした機能が人材のステイタスの見える化において、大きな意味を持つことは間違いない。従業員同士のスキルや経歴を比較でき、さらに組織図出力によって組織単位の要員や戦力の確認もできる。
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伸びしろの限られる日本市場に留まることなく、海外に拠点を広げたり、活発にM&Aを行ったりする企業にとって、もはや人材は連結規模で精査し、隠れた価値の掘り起こしと最大化を行う時代が来ている。グループのパフォーマンスを底上げする意味で、こうして広範かつリアルタイムの人事情報の把握と人事戦略立案・実行は不可欠だ。
日本企業が冒頭のような人手不足にあえぐ中、世界の巨大IT企業は欲しい人材に照準を絞り、年齢やキャリア、国籍に関わらず、1000万円超の高額報酬で雇用することが常態化している。日本企業の人事部門は、もはや定型業務に多くの時間を取られるべきではない。定型業務は、RPAなどのテクノロジーを駆使して効率化し、「SuperStream-NX人事給与」など最新の武器を手に、戦略的人事に早急に着手する時が来ている。
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