どんな企業においても、財務計画・事業計画の立案と予算・実績管理(予実管理)は経営の根幹をなす重要な業務である。しかし、複数の部門と多くの担当者が関わる業務であるにもかかわらず、Excelなどの表計算ソフトによる作業を行っている企業が多いのが実態だ。表計算ソフトは便利ではあるが、プランニング専用のツールではないため財務計画業務に適しているとはいえない。財務計画では予算管理のため実績管理と修正予算立案などが必要になるが、表計算ソフトでは予実差の要因を見つけ出すことが困難なのだ。
今回紹介する次世代プランニング・ツール「IBM Planning Analytics」は、「IBM Watson Analytics」との連携により、例えば目標未達成だった事業の問題点を素早く見つけ出し、グラフなどを使用して分かりやすく可視化してくれる。これにより経営企画部門や事業部の担当者は、計画立案と計画達成のためのPDCAに集中できるようになる。Planning Analyticsが提供する価値と効果について、日本アイ・ビー・エム インダストリー・ソリューション事業開発のエグゼクティブコンサルタントである味園真司氏に話を聞いた。
財務計画・事業計画の策定で、
Excelなどの表計算ソフトを利用することによる3つの弊害
すでにExcelで財務計画を立案している方々には思い当たる節があると思うが、一番の弊害は「作成している財務計画書の管理が煩雑」であるということだろう。財務計画書ファイルは、他の担当者と共有するためにファイルサーバーに保管しているが、更新の際はダウンロードして手元のパソコンで作業し再度ファイルサーバーにアップロードするという方法を取る場合が多い。複数部署と複数担当者での作業が多いためファイル名だけの確認ではバージョン管理等も煩雑になり、更新したはずなのにいつの間にか古いバージョンに戻っているという先祖返りの現象が起きることになる。
また、データの収集、集計、加工、確認作業に多くの時間を費やすため、担当者は長時間勤務をせざる得ない状況を招いてしまう。それにより、本来の財務計画策定ための戦略立案や分析・調査というコア業務に集中する時間が減ってしまうという大きな弊害をもたらすことになる。さらに、承認ワークフローや進捗管理、変更ログなどの機能がないためプロセスを適切に管理できず、計画業務をスムーズに進行できないことも問題となっている。
整理すると以下の3つの弊害が起きている。
- 財務計画書・事業計画書のバージョン管理等も煩雑になり、先祖返りのトラブルが起きる
- データの収集、集計、加工などに多くの時間を費やし、コア業務の時間を圧縮する
- 誰がどこまでやっているのか進捗が見えず、スムーズな計画業務の進行ができない
財務計画・事業計画の策定において重要な、
関係部門での共同作業
財務計画・事業計画の策定では、複数の部門と担当者による共同作業がほぼ必須である。経営企画部門や財務部門だけで財務計画・事業計画を立案することはなく、各部門からの各種数値のインプットや調整、意見交換を通して財務計画は作られていく。関係部門による共同作業によって財務計画・事業計画を作り上げていくプロセスでは、目標の達成意識と課題への認識を一致させ、財務・事業計画を他人事と思うことなく遂行に向かわせることが重要になる。
特にグローバル展開する企業においては、海外子会社と計画立案の段階から、財務・事業計画の内容について両者で合意する必要性がより高くなるため、効率的な共同作業の実施が非常に重要だ。
効率的な共同作業を支援するために、次世代プランニング・ツールであるPlanning Analyticsでは充実したコラボレーション機能を提供している。
Excelによる財務計画立案で大きな問題点となる「複数関係者によるシートの管理」については、更新し保存するだけで自動的にサーバーへデータの更新が反映されるため、ツールのメニューから任意のバージョンの財務・事業計画データをすぐに閲覧できるようになっている。
Excelの配布、収集、集計という作業自体が自動化されるため、これまで人手で行なっていた数字の取りまとめや確認の作業が大幅に短縮される。
また、複数の関係者との共同作業をスムーズに進めるためには、各担当者の進捗を確認できる必要がある。計画を完了しているかを確認するだけではなく、まだ計画に未着手なのか、すでに計画に取り掛かっているのかのステータスを確認し、スムーズな計画策定を行うことが可能になる。
加えて、「付箋」のようにコメント追記できる機能や、チャット機能によるリアルタイムのコミュニケーションができることも特徴だ。チャットを使えば疑問や解決法を探しているとき、専門知識を有した担当とすぐにコミュニケーションできるため、問題を先送りすることなく計画立案を進めることができる。
予実管理においても、予実差が大きな項目は「ワーニング」を表示することができる。図1の例では、純利益と一株当たり利益が計画を下回っているため赤色のワーニングが表示されている。また図2の例では、部門別や地域別に目標を下回っている項目が赤色で表示されている。
このように、企業の目標を達成するためのKPIに対して、Planning Analyticsでは現在の状況をスコアカードで簡単に確認することができる。ワーニングが出た部分について、予実差を埋めるためのアクションプランを検討したり、必要に応じて修正計画を立てることも可能だ。その際に役に立つのが、Watson Analyticsとの連携によりその理由を深掘りできる機能だ。
統計知識がなくとも、財務計画を成功に導くための関係因子を見つけ出すWatson Analyticsとの連携
Planning Analyticsは優れたコラボレーション機能に加えて、財務計画・事業計画の遂行において影響を与える因子との関係性を探し、業績の拡大や修正計画の実施に必要な洞察を簡単に見つけ出すことができるという大きな特徴をもっている。財務計画の立案や遂行において知りたいことをWatson Analyticsに尋ねると、関係する因子の組み合わせをいくつか提示してくれる。そのため統計知識がなくとも業績向上に影響を与える因子を短時間であぶり出せるのだ。
図3は売上に影響を与えている因子を関係の強さごとに配置することで、何が売上向上につながるかを視覚的に示している。円が渦巻状になっており、中心に近いほど影響が強いことを示している。売上と関係性が強いと分析された因子をクリックすると、さらに詳細を調べることができる。
複数の因子の関係性から結果を予測することは統計知識があれば可能だが、財務計画・事業計画を立案する担当者がすべて統計知識を持っているわけではない。また財務計画の担当者が数年で変わる企業も多いため、常にノウハウを持つ担当者がいることも少ない。そのため、Watson Analyticsによる支援は効果的だと言える。
Watson Analyticsでデータにもとづく洞察を得た上で、再びPlanning Analyticsに戻り計画の精度をさらに高めていく。需要予測に基づく計画に対して、例えばキャンペーンの実施予定や新製品発表の予定などを考慮して数字の補正を行う「意思入れ」もPlanning Analytics上で簡単に行うことができる。
図4では、2月にキャンペーンを実施することを考慮して、1月は統計ベースの予測値を下方修正し、2月の数値を上方修正する。このようなシミュレーションを繰り返すことにより、計画の精度を高めていくことが可能になる。意思入れのシミュレーションはExcelインターフェースから行うことができるため、既存のスキルを活用しながら大幅に業務を効率化することができる
このようにPlanning Analyticsは、経営企画や財務部門がコア業務である戦略策定や計画達成のためのPDCAに集中できるよう支援する。
Planning Analyticsにはクラウド版とオンプレミス版の両方が用意されているため、自社の要件に合わせて選択することができる。クラウド版にはWatson Analyticsが含まれており、環境構築の必要もないため、より迅速にスタートすることが可能である。
まずはPlanning Analytics の詳しい情報をダウンロード
Planning Analyticsの機能やメリットについてより詳しく解説するホワイトペーパーやソリューション・カタログが用意されているので、ぜひ活用してほしい。
また、本格的に利用する前に、まずは無料トライアルを利用すればデモ用のデータで使い勝手やメリットを体験することもできる。表計算ソフトだけでは実現できないIBM Planning Analyticsによるコラボレーション支援とWatson Analyticsとの連携による多くの洞察の獲得は、財務計画・事業計画の担当者に大きな支援となるだろう。
インダストリー・ソリューション事業開発
エグゼクティブコンサルタント 味園 真司 氏
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