世界中のサッカークラブの経営状況を分析した「デロイト・フットボール・マネー・リーグ」 2016年版によると、トップ10のクラブチームのうち、スペインのFCバルセロナとイングランドのアーセナルが大きく収入を伸ばしていることがわかる。しかしその要因はまったく異なっており、FCバルセロナがUEFAチャンピオンズリーグの優勝に寄与しているのに対し、アーセナルは大型スポンサーの契約締結やエミレーツ・スタジアムの入場料収入が好影響を与えている。
このように、サッカークラブの経営おいては、チームの強さはもちろん、観客動員数や各試合の結果、監督やスター選手の人気など、多様な要素が複雑に絡み合っているほか、チームメンバーやスタッフ、ファンやスポンサーなど多岐にわたるステークホルダーから構成されており、企業経営のヒントになる多くの事象が隠されていると言えるのではないだろうか。
長期的な視点を持ったチーム育成を
サッカーは高いスキルを持ったファンタジスタを集めれば、必ず勝てるというものではない。事実、FIFAクラブワールドカップ2016においては、Jリーグの鹿島アントラーズがアジアのクラブで初となる決勝戦へ駒を進め、世界最強チームと称されるレアル・マドリードを延長戦にまで追い詰めたことは、記憶に新しい。
スター選手を獲得するには巨額の契約金が必要となる。また、選手が快適にプレーしたり、魅力的なクラブへ育てるためには、多岐にわたる投資が欠かせない。その資金を集めるためには、強いチームを作って多くのファンを惹きつけ、チケットやグッズから利益を得たり、チームにとってより有利なスポンサーを見つけたりして資金を調達するのもクラブオーナーの重要な役割だ。
これらの要素がすべて詰まったウイクラでは、経営者としての才覚だけでなく、チーム内の人事権を持つ指揮官として、選手の獲得・育成・強化・モチベーションの管理など、刻々と変化するチームの状態を見ながら、的確な采配をとることも求められる。
シーズンマッチを終えると選手は年を取っていくため、完璧なチームを作り上げたとしても、首位の座に君臨し続けられる保証はどこにもない。長期的な視点を持ち、世代交代がスムーズに運ぶよう、若い選手を育てておくことが重要なのだ。
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採用の難しさは現実世界と同じ
「ゲームなんだから、課金すれば良い選手を獲得できるだろう」と侮ってはいけない。
確かに、ウイクラで新しい選手を獲得するには「PES Coin」と呼ばれるゲーム内通貨が必要となるが、マーケットに出ている選手のスカウト権をオークションで落札するか、誰が出るかわからないくじ引き式のスカウトを行うため、欲しい選手が必ず手に入るわけではない。また、チームに所属させられる選手枠には制限があり、ハイパフォーマンスな選手を手当たり次第に集めてプールしておくような、乱暴なやり方は通用しないのだ。
募集をかけても欲しい人材がピンポイントで応募してくるわけではないし、採用に割ける予算にも限りがあるというのは、ビジネスにおいても同じだろう。既存メンバーとの兼ね合いを鑑みてアセットを最大限に活かしながら、メンバーひとりひとりが最高に輝ける環境を作り上げなければならない。
現実世界と同様に、チーム編成には監督のフィロソフィーが表れる。
点取り屋ばかりを集めても、中盤の主導権争いに負けてしまうようでは、ボールをなかなか自陣のゴール前まで運び込めず、得点に繋がらない。逆に、守備ばかり強化しても、得点力のある選手がいなければ、ただひたすら押し込まれて、体力を消耗するだけで終わってしまう。
チームに代えの利かない選手がいることも大いに危険だ。ひとりの選手に依存し過ぎると、ケガなどのアクシデントによって、その選手が離脱した途端に、チームの急激な弱体化を招きかねない。
次に、こうした組織マネジメントをシミュレーションできる、ウイクラの機能を経営の3要素「ヒト・モノ・カネ」に沿って、いくつか見ていこう。
ウイクラで学ぶチームマネジメント
■ヒト
試合前に表示されるのが、この「チーム編成」画面だ。フィールドの中に入っている円形のアイコンがスタメンであり、枠外にいるのは控えの選手である。この円形のアイコンをドラッグアンドドロップすることで、選手の入れ替えができる。
この中で最も注目すべきは、円形のアイコンの下にある「バー」と右下の「三角印」だ。バーが緑色なら80%以上の体力が残っているという意味で、これが試合時間の経過につれ、黄色から赤色へと変わりながら減少していく。減少スピードは選手によって異なるが、体力がないままプレーを続けさせるとケガやモチベーションの低下につながりやすくなるので、注意が必要である。
一方、三角印は選手のモチベーションを示している。三角印が下を向いているということは、選手が本調子ではないということだ。円形のアイコンの中の数字が選手の能力値を示すが、どんなに数字が大きくてもモチベーションが下がっていると、本来の力を発揮できない。体力やモチベーションが落ちていたり、ケガをしている選手を出場させたいときは、回復アイテムを使って万全の準備を整えよう。
それぞれの円形のアイコンから選手名をタップすると、各選手のステータスを個別に見ることができる。カッコ内の数字が各ポジションに配置した時の適正値なので、例えばルイス スアレス選手の場合、CF（センターフォワード）に配置するのが最適で、ST（セカンドトップ）やLWG（レフトウイング）、RWG（ライトウイング）に入れてもそれなりに高いパフォーマンスを出せることがわかる。グレーアウトしたポジションでは活躍できないため、「ルイス スアレスならOMF（オフェンシブミッドフィルダー）でもいけるだろう」と勝手に判断するのはよろしくない。
試合中もリアルタイムで指示を出すことができる。左下に並ぶ5つのアイコンから、「攻撃タイプ（ポゼッション/カウンター）」「ビルドアップ（ショートパス/ロングパス）」「攻撃エリア（中央/サイド）」「守備タイプ（フォアチェック/リトリート）」「プレッシング（アグレッシブ/セーフティ）」を選択したり、7段階で攻守レベルを設定したりすることが可能。そのほかにも、戦局や残り時間を見て、控えの選手と入れ替えるなど、適宜調整をしながら、チームを勝利へと導こう。
監督としての采配が正しかったのかどうかは、試合の結果が証明してくれる。試合終了後には、どこでボールを取られているか、誰にボールが集まっているかといった細かい情報も見ることができ、誰の動きが良くなかったのか、チームの弱点はどこなのか、といった次の試合で改善すべきポイントを把握しておくことが大切だ。
■モノ
マイタウンにある施設をアップグレードすることで、様々な効果を得られるようになる。例えば、スカウトエージェンシーのレベルを上げると、マーケットでリストアップされる選手がより優秀になるし、スタジアム設備のショップのレベルを上げれば、グッズ収入の売上アップにつながる。効率的にチームを強化するために、賢く投資していきたい。
■カネ
クラブ運営資金は「GP」という通貨を用いる。GPはスポンサーと契約して獲得できるほか、試合に勝利した場合などにも入手することができる。また、契約するスポンサーは、ディビジョンによって選択肢が与えられる。基本報酬が少なくともボーナスで得られる賞金を大きくするか、逆に基本報酬を多くしてボーナスに期待しないか。ボーナスには条件があるため、チームの戦略に合わせて選択するといいだろう。
以下のように一度に大型投資をしすぎて支出がかさむと、来シーズン開始時のGPがマイナスとなり、選手との契約更新ができなくなってしまう危険があるので、注意が必要だ。
目標設定は自分次第
ウイクラがビジネスシーンと最も近しいのは、“目標は自分で定めるものであり、数字を見ながら改善を繰り返す”という点だ。ディビジョンの優勝をKPIとしつつ、最終的に世界ランキング1位を目指すのもいいだろうし、クラブ成績のレーティングポイントで世界ランキング1位を目指しても、もちろん構わない。あるいは名声を集めた殿堂入り選手を生み出し、自分の好きな選手だけを集めたドリームチームを作るのも、きっと楽しいだろう。
試合を重ねて上のクラスに行けば行くほど、一筋縄ではいかない厄介な相手に出くわすこともあるはずだ。対戦相手に応じてチームの戦略を一から練り直す必要に迫られることもあるかもしれない。そんなときこそ、ケイパビリティーを最大限に活かし、チームの優位性を引き出すのは、クラブオーナーに課せられた使命である。
あなたもサッカークラブのオーナーになって、経営者視点を養ってみてはいかがだろうか。
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