これまで日本では、仕事中心の生活が当たり前のように思われてきたが、心身の疲労や家族への負担など、多くの弊害を生み出していることも事実である。スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の浸透は、業務効率化を向上させる反面で仕事と生活の境を取り除き、いつでもビジネスの状態に置かれてしまう状況を増加させているかもしれない。いま、「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」が、多くのビジネスパーソンにとって重要な事案であると言ってよいだろう。
ビジネスパーソンはこうした現状をどう感じているのだろうか。JBpressでは2015年10月、読者に対して「企業におけるワークスタイルに関するアンケート」と題したアンケートを実施し、何が仕事の生産性を下げているのか、業務のどこを改善したいのかなどを調査した。その回答結果から、企業におけるワーク・ライフ・バランスの現状とワークスタイル変革のポイントを探ってみよう。
職種では「人事/教育」、業種では「運輸/エネルギー」が、
最も残業時間が多いという結果に。
設問「一週間の残業時間は平均で何時間くらいですか?」に対しては、全回答者の平均残業時間は8.9時間という結果となった。残業時間が多かった職種は、「人事/教育(13.5時間)」が最多で、「保守/サポート(11時間)」「調査/マーケティング(10.7時間)」がこれに続いた。自身で業務をコントロールしにくい職種の場合、残業時間が増えてしまう傾向にあることがみてとれる。平均残業時間を越えた職種は9職種、逆に平均残業時間を下回った職種は、「情報システム(社内向け)」以下の10職種であった。人事を除くバックオフィス系の職種は計画的な業務遂行ができるため、残業時間が少ない傾向にあるようだ。
業種別にみると、「運輸/エネルギー(21.2時間)」が他を大きく引き離し、「教育/研究機関(12.9時間)」「その他の産業/業種(12時間)」がこれに続く。しかし多くの業種で平均残業時間を上回っており、平均残業時間以下だったのは自営業以下の8業種であった。
現在の勤務状態について、
半数近くが「とても満足」、「やや満足」と回答。
残業時間と勤務状態への満足度との関連性は低い。
設問「あなたは、現在の勤務状態に満足していますか?」については、「やや不満」「とても不満」の合計が26%だったのに対して、「とても満足している」が10%、「満足している」が37%で、半数近くが満足しているという結果となった。
前述の残業時間との関連性をみると、必ずしも残業時間の多さが勤務状態への満足度と比例していないことがみてとれる。残業時間が多いほど不満と感じる層は増えるが、満足している層でも残業時間が非常に多いという回答者もいる。処遇ややり甲斐などの要素が、勤務状態への満足度に大きく影響していると推測される。
職責が高いほど業務生産性を意識して業務を遂行。
設問「就業時間内における自分自身の業務生産性をどう評価しますか」に対しては、「大変高い」「高い」との回答が40%で、「どちらでもない」という回答(41%)とほぼ同数となった。業務生産性を意識した業務遂行の取り組みが進んでいると言えるだろう。業務生産性を費やした時間に対する結果だと考えると、時間の使い方が上手いビジネスパーソンが多い、つまりワーク・ライフ・バランスがうまくいっていると判断できるのだろうか。この点については、次回の記事で考察することにする。
また、業務生産性を役職ごとに分類してみると、役職が高いほど業務生産性が高い傾向が表れる。経営者や管理職にとって、業務生産性向上への意識が不可欠だと言えるのかもしれない。
「文書作成のための情報収集」といった事前作業や
メールの処理に多くの時間を使っているビジネスパーソン
設問「社内での業務で時間を使っている作業は何ですか(上位3つ選択)」に対して、1~3位のいずれかを回答した合計の順位では、「文書作成のための情報収集など事前作業」(229回答)、「その他」(204回答)、「メール処理」(201回答)となった。より業務生産性を高めるには、効率的な情報収集や、メール処理を短時間で済ますことが必要だと考えていることが見てとれる。
「その他」の作業内容は企業や職種により異なるため、一概に時間削減はできないと思われる。しかし、かなりの時間を使っていることを考えると、一度業務を見直し、作業時間を削減するための施策を検討すべきだろう。また、「報告書など社内向けの文書作成」という回答も176件と少なくない。内向きの作業を社外向けの業務に割けるよう、企業として業務プロセスの見直しも必要かもしれない。
「情報収集など事前作業」の時間短縮を実現するソーシャル
多くのビジネスパーソンが何に時間を費やしているかがわかったが、どうすれば時間を削減し、業務生産性を上げることができるのだろうか。IBMにおける事例をもとに解決策を説明しよう。
IBMでは、先進的なワークスタイルの実現のため、ソーシャル・プラットフォームを利用している。文書作成のための情報収集といった事前作業の時間を短縮するためには、情報収集の効率化が必要だ。つまり、重要なことは、「知りたい情報に素早くたどり着くこと」なのだ。ソーシャル・プラットフォームを利用すると、知りたい情報に素早くたどり着けることを、具体的な活用法をもとに説明しよう。
ソーシャル・プラットフォームの、「コミュニティ」や「フォーラム」を活用すれば、知りたい情報に関してアドバイスをもらうことができ、情報に素早くたどり着けるようになる。また情報は「ファイル」で共有されているため、公開状態のものであればダウンロードし利用することができる。文書作成だからと言って一から文書作成するより、すでに同様の文書があるのなら再利用する方が効率的だ。また、その分野に精通したプロフェッショナルからの意見を聞きたい場合には、「プロフィール」や「ブログ」を活用すれば、社員の中から専門家を探しだすことが簡単にできる。
現代のビジネスパーソンの悩みの種、
増えるメール処理時間をいかに短縮するか。
業務の作業時間の多くを費やす「メール処理」の改善についても説明しておこう。IBMは、現在のメールが抱える課題を次の5つと考えている。
1:何に注力すべきか分からないこと。
2:必要なものがすぐに見つからないこと。
3:どのアプリケーションを使ったらよいのか分からないこと。
4:コンテンツや知識の共有が難しいこと。
5:過重労働やストレス過多、不満につながり、非生産的であること。
現代のビジネスパーソンのコミュニケーションはメールが主体となっているため、業務が増えるにつれメール数は急増し、受信ボックスには大量のメールが届く状況になっている。しかし、メールは受信順に羅列されているだけなので、一見して何を優先して処理すべきかを判断しにくくなっている。重要なメールや経緯を知るため、過去のメールを探し出すことはよくあるが、必要なメールを見つけることが大変な労力となっており、目的のメールを探すことに費やす時間は増えてしまっている。
増えるメール処理と効率的なコミュニケーションへの解決策として、IBMは「IBM Verse」というメールソリューションを提供している。IBM Verseは、IBMのアナリティクス技術を利用し、重要なメールから処理できるように設計された、次世代のメールソリューションだ。インターフェイスで特徴的なのは、画面上部に表示される頻繁にコンタクトする人物の顔写真で、アナリティクスにより自動的に選抜される。
顔写真をクリックすると、その相手からのメッセージが一覧で表示される。そこから簡単に絞り込み検索をかけて、必要なメッセージを探すこともできる。また、メール、チャット、オンライン会議など、必要に応じたコミュンケーション方法も選ぶことができる。
また、モバイル端末での利用においては、表示がモバイル用に最適化されているため、スキマ時間を使ったメール処理も素早く行うことができる。
このようにITを上手に活用することで、ビジネスパーソンが業務で費やす作業時間を削減できるようになり、いっそうの業務生産性の向上が可能になる。
次回は、ワーク・ライフ・バランスの現状やテレワークの取り組み状況、生産性を高めるため改善すべき業務などについての調査結果をまとめていく。
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