先ごろ本国のアメリカで株式公開を行い、名実ともにトップIT企業の一社となったTwitter。140文字を投稿するシンプルなこのサービスは、ユーザーからのフィードバックを取り入れながら、今や世界で月間2.3億人が利用する、情報流通の巨大プラットフォームへと成長した。
情報のプラットフォームとなったTwitterを、いかにマーケティングに活用するか――多くのマーケターや広告人が注目するイベントが、10月31日、東京・品川で開催された。Twitterの広告主企業や広告代理店、およびパートナー企業を対象とするイベント「#FlywithTwitter Tokyo - “Plan For the Moment”」がそれだ。
Twitterの理念と哲学、コンセプト。「Live」「Public」「Conversational」
まず壇上に登場したのは、Twitter Japan セールスディレクターの味澤将宏氏。味澤氏はTwitterの理念と哲学は、「Live(今を伝える)」「Public(広く伝える)」「Conversational(話題となる)」であると強調する。
「Liveとは、今まさに起こり、進行しているイベントや出来事をリアルタイムに伝えていくことを意味します。Publicは、オープンなプラッ トフォームであるTwitterを通じて、その“今”がグローバルへと展開、拡散していくということです。そして、Conversationalは、Twitterが議論を活発にするプラットフォームになるという点を表しています」
味澤氏は、ハドソン川への航空機不時着事件の速報がTwitterによって拡散されたケースなどの具体例を挙げながら、Live、Public、Conversationalのコンセプトが現実のものとなっていると言う。
プロダクトマーケティングマネジャーが語る、Twitterの広告製品戦略
今回のイベントの目玉の1つが、Twitter Inc.からこの日のために来日したプロダクトマーケティングマネジャー、John Heywood 氏によるセションだ。Twitterの担当者が語るTwitterの広告戦略とは何か、来場者の注目が一層高まった。
「Twitterはこれまで、従来型のWeb広告モデルの導入を拒んできました。それは、Twitterが利益よりも価値を重視してきたからです」と、Heywood氏は切り出した。
Twitterをプラットフォームとする情報のオープンなやりとりが普及したことによって、個人はもちろん、組織や企業も「“やりとり”の価値」を認識した。そして、この“やりとり”こそが、さらなるビジネス機会の創出へとつながっていくことを知った。ここで言う“やりとり”とは、いわば対話である。対話にこそ価値があり、Twitterによってその価値を実現するためには3つの重要なポイントがあるとHeywood氏は言う。
(1)広告主はTwitterでのやりとりを通じて「長期的な価値」と「短期的な収益」の両方を得ることができると認識すること
(2)長期的な成功を手にするためには、広告のユーザーエクスペリエンスがTwitterの仕様と整合性を保っていること
(3)企業のブランディング担当者は、Twitterを単なる情報発信としてではなく、Twitterで「対話を起こす」こと
さらにHeywood氏は、Twitterこそが、広告主のブランドが持つ個性を適正なユーザーへ適正なタイミングに運ぶように設計されているプラットフォームであると強調する。
Twitterは「ブリッジ」である
ユーザーは、Twitterに日々アクセスする中で、新しいコンテンツを発見し楽しさや喜びを感じる。プラットフォームであるTwitterは、ユーザーが最適なタイミングでコンテンツや対話の相手との出会いを手伝うのである。
ではTwitterは、いかにして収益化をするのだろうか。「マネタイズは製品に自然(ネイティブ)な形で実施されます。自然な形というのは、Twitter自体の性質と適合した形での収益化を目指しているということです」とHeywood氏は話す。
「ツイートは互いに補完し合い、世界で今まさに起こっていることをさらに拡散できる力を持っています。Twitterは“ブリッジ(橋)”です。情報やコンテンツをつなぎ、キャンペーンをチャネル横断的なものにします。Twitterは内部だけで完結しているのではなく、他のネットのサービスやテレビなどをつなぐ架け橋になっているのです」(Heywood氏)
製品開発の5つの分野
続けてHeywood氏はTwitterが取り組んでいる製品開発について、分野を分けて解説した。
(1)Twitter Cards
Twitterがテキストを扱うツールとして登場して7年。その間、立ち止まることなく、ダイナミックなストーリーテリングのキャンバスとして進化してきた。「わずか140文字」と言われたのも今は昔、「140文字でできること」は日々、増え続けている。
例えば Twitter Cards(タイムライン上に、指定した見出しテキストや画像を組み合わせて表示させる機能)とプロモツイート(広告主が発信したツイートとユーザーをマッチングして表示する広告機能)を利用することで、広告主はよりリッチな体験をユーザーへと提供できる。体験の創造と提供という「体験の連続」によって生まれる好循環は、ユーザーがコンテンツを発見することを容易にし、情報の消費や共有を促す効果がある。
「Twitter Cards ではテキストだけの訴求だけでなく、アーティクル(記事)やブログ、写真、ビデオといったものへと範囲が広がりました。これらはコマースの推進を支援しています。広告主向けには、ユーザーのメールアドレスをツイート上から1クリックで獲得できるリードジェネレーションカードもあります。これは商品への誘導、クーポン、ダイレクトアクセスなどをより効率化するでしょう」(Heywood氏)
(2)Twitter and Targeting
Twitterはターゲティング広告とも親和性が高い。ユーザーが関心のあるキーワードを検索したりツイートしたりすると、該当するプロモーションのツイートが表示される。その情報を必要としていると思われるユーザーへ最適な情報を届けることができる。
「ユーザーはTwitter上で、興味や関心あるブランドについてのメッセージを発信します。それらのツイートは、企業がターゲットとしているオーディエンスを、次のプロモツイートへと誘導するでしょう」(Heywood氏)
では、そのターゲットオーディエンスをどう見つけるか。9つのアプローチがあるとHeywood氏は話す。
「検索内容、ユーザーが長期的に持っている興味関心、フォロワー、似たユーザー、性別、視聴しているTV番組、地域、モバイル、キーワードです。これらの“キーとなるシグナル”を見つけ出してメッセージとユーザーをペアリングします。そして、さらにリッチなメディアなどを使用し、つながりを拡げていくのです」
(3)Campaign management
これはツイートをあらかじめ登録して、指定時刻にツイートされる「予定投稿」の機能のこと。
「スケジューリングされたツイート、つまり予定投稿をすることで、コンテンツのプランニングやキャンペーンの管理が容易になります。いつ、どこに、だれに、その情報を届けるのかという管理が簡単になります」(Heywood氏)
「キーワード」と「興味関心のターゲティング」「@ユーザー名ターゲティング」を効果的に利用することで、実施予定のキャンペーンにおけるオーディエンスを定義しやすくし、両者を結びつけることが容易になる。そしてキャンペーンが始まったら、キーワードや興味関心、ユーザー名での分析が効率的に行えるようになる。
(4)Ad effectiveness and measurement
続いてHeywood氏は広告の有効性、有益性の測定について解説した。
「適切なターゲット・オーディエンスに対してどのようなインパクトを与えることができたか、その『影響の度合い』を見極めることが必要です。これは、コンバージョンファネル全体の最適化を意味しています」
どのようなプラットフォームであってもコンバージョンファネルには「発見」「認知」「ダイレクトセールス」などのレイヤーがある。Heywood氏は、各レイヤーにおけるTwitterの広告の優位性を訴える。
「上位レイヤーではまず、ブランド好意度調査、購入意欲調査、センチメント分析などがあります。下位の方ではオンライントラフィック、サーチ分析、リードジェネレーション。店頭での効果測定などが対象です。Twitterで言及されている割合と実店舗での売り上げは連動しています。オンラインでのブランド好意度向上は、実際にユーザーの購入意欲を向上させることが調査結果からも明らかになっています(ニールセンの調査)」
(5)センチメント分析
センチメント分析とは、ユーザーの感情をポジティブ、中立、ネガティブなどの軸で分析する手法である。広告主はプロモーションによって、ユーザーのブランド好意度がどのように変化したのかを計測できる。Heywood氏は、Twitter上で実施されたプロモーションの結果はおしなべてプラスであったと言う。
「Twitterでのプロモーションによって、商品のトライアル件数や購入数など、全項目において数値が上昇しました。ブランドについての言及やメンション、リツイートなども増えてポジティブな感情を引き出し、結果的には購入意欲向上などの成果が出ていることが判明しています」
リード数の向上と測定
Heywood氏はこのように5つの製品の分野における状況を解説した。しかし定量的にはどうか。「Twitterのプロモ商品の1つであるプロモトレンドの結果を分析すると、24時間以内にブランド名で検索する人が30%増、ブランドサイトを訪問する人は5割増」とHeywood氏は明かす。
加えて、Twitter Cards で、よりリッチな体験をユーザーへ提供し、リードジェネレーションカードでユーザーとのつながりを強化する。ユーザーは1クリックでコンテンツなどを受け取ることができるなど、「これはまさにTwitterが橋であるゆえんです」とHeywood氏は力説する。
TVとTwitter。高い親和性と相乗効果
近年、Twitterは既存メディア、特にTVとは関係性があり、相互補完性も高いことが調査結果から分かってきた。
「TwitterはLiveでPublic、かつConversationalなメディアです。そのため生中継のTV番組との親和性は極めて高いです」とHeywood氏は言う。
「TVの視聴率向上とTwitterのツイート数の増大には関連性があり、人はTVを見ながらツイートするのが好きなのです。グローバルな会話に関わりたいと思うのでしょう。どちらか一方が要因でもう一方が結果といった関係ではなく、双方向のものです。TV番組に関するツイートをする人が増えると視聴者が増える。視聴者が多いとツイートをする人も増えるという関係なのです」
ここで重要になるのがツイートの件数ではなく、インプレッション数であるとHeywood氏は言う。
「1ツイートは、平均50人に見られています」(Heywood氏)ということは、TV番組に関するツイートを見た50人の次のアクションが、“TVをつけて(またはチャンネルを換えて)その番組を見る”となる可能性があるということだ。
実際、テレビ番組に関するツイートの70%は放送中のもの。すなわち、広告主はライブの瞬間を活用するチャンスがあるのだ。分析テクノロジー企業のブルーフィンラボを買収したTwitterはこの関係性をより広告主が生かせるよう、サービス化していく予定だ。
Twitter上で特定のTV番組を話題にしているユーザーがいる場合、そのユーザーはおそらくその番組のコマーシャルも見ている。広告主は、そのユーザーへメッセージを送ることで、そのユーザーとの接点を増やすことが可能だ。Heywood氏はこうした展開を「ブランドとユーザーの接点およびチャネルが大きくなることでエンゲージメント率が向上し、利益確保はより確かなものになります」と言う。「TVとTwitterを併用することで、エンゲージメント率は27%向上しました。従来の『TVのみの場合』と比べ、併用によってメッセージ想起度の95%向上が調査結果からも判明しています(ニールセン・ブランドサーベイ)。また、購入意欲も58%上昇しました」(Heywood氏)
このサービス展開は現在、米国のみで展開中だが、2014年度上期には日本にも展開する予定など、グローバル規模へ拡大していく予定とのことだ。親和性の高いメディアの効果的な併用は、これまで以上に広告戦略のスタンダードな手法として広まっていくだろう。
Twitter活用の最前線が語られた他のセッション
本イベントでは、野村総合研究所(NRI)やNTTデータ、NTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションが提案するTwitter活用ソリューションの紹介や、ビデオリサーチによるTV視聴率とツイートの相関関係の解説、WOWOWのTwitter活用事例、コカ・コーラと電通のディスカッションなどが行われ、来場者は熱心に聴き入っていた。
(中) 日本コカ・コーラ、塩田光孝氏
(右) 電通、廣田周作氏
“今”を伝え、対話が起こり、世界が見えるTwitter。Heywood氏が述べた通り、この情報プラットフォームはユーザー同士をつなげ、コンテンツを流通させる「ブリッジ」だ。広告主企業はいかにして自社ブランドを顧客の購買行動へと結びつけるか。そのヒントが多く語られたイベントであった。