呆れるほどの低支持率だが、粘りを見せるか(POOL via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)
  • 自民党を揺るがしているパーティー券を巡る裏金問題。年末から来年にかけての焦点は、次期通常国会が始まる前、あるいは始まったあとに議員辞職する安倍派議員が出るかどうか。
  • 「岸田降ろし」が始まるかどうかも、3月15日の衆参補選期日までに、何人が起訴され、何人が自分から議員辞職するのかということを見極めてからの動きになる。
  • その時に、大量の議員辞職が出れば、3月15日までに岸田さんが総辞職を決断し、自民党総裁選をやったうえで新任総理総裁が解散という可能性もゼロではないが、岸田首相を降ろしたところで、火中の栗を拾う人がいるだろうか。

(山本一郎:財団法人情報法制研究所 事務局次長・上席研究員)

>>>「デンジャーゾーンに入っている」と山本一郎氏が指摘する議員の写真

 年末に向けて東京地検特捜部の動きが大きくなっています。12月19日朝には安倍派、続いて二階派の事務所に家宅捜索が入りました。

 少し前まで、各派閥に所属する議員の政治資金収支報告書への未記載は、検察からのリークに主導される形で「些少な額でも立件可能ならば幅広にやる」と風呂敷が広がっていましたが、途中から「未記載を指示した大物議員の立件も状況によっては難しい」とトーンダウンし始めており、興味深いところです。

 自民党議員の側も高まるべき危機感がさほど高まらず、まあ何とかなるだろう的な温かい雰囲気に包まれているのはどうなのと思わないでもありません。国民はそういう姿勢や態度にブチ切れているからこそ、政党支持率もついに急落してきたんですけどね。

 事実関係もかなり報じられ始めてはいますが、過去5年で5億円以上の派閥資金を還流させ、そのほぼすべてが報告書に未記載であった安倍派はともかく、派閥の収支報告書には未記載だったものの、議員個人はしっかり収入を記載していた二階派は問題にできないのではないかという話が出てきました。

 それゆえに、岸田文雄政権でも、二階派から閣僚に入っている法務大臣の小泉龍司さんと国際博覧会担当の内閣府特命担当大臣である自見英子さんは議員個人の収支報告書で派閥からの入金をきちんと記載しているため、大臣個人としての責任は追及できず、二階派からの離脱はしつつも大臣留任の方針が出ています。

 まあ小泉龍司さんも自見英子さんも大臣として個人が悪いわけではありませんから、留任は当然なんですけれども任命権者の総理なり大臣本人からの説明がもう少し世間にあって然るべきなのかなと思います。

 他方、安倍派に関しては、亡くなられた細田博之さんが派閥の事務総長を務めていた時期に、「各議員は派閥からの資金を収支報告書に記載するな」という具体的な指示が出ていたことが判明し、割と微妙な感じで「死人に口なし」の状況になっています。

 実際そうなのでしょうが、それで国民が納得するかと言われると微妙ですし、政治というか自民党への信頼を回復させるという点で言えばむしろマイナスかもしれません。

 50万円や100万円という些少なキックバックしかもらっていない未記載の議員に関しては、後付けで資金報告書を修正すれば罪に問えるほどのものではないと判断される可能性も出てきているようです。

 一時期、朝日新聞など関係先に対して「自民党が崩壊するぞ!」というような勢いでリークを繰り返していた検察が大人しくなったのもそういう理由です。

 いや、まあ、そこまで張り切ってマスコミにネタを投げてきたんだからもうちょっと頑張れよ、とこっちが心配になってしまうほどの尻すぼみ感です。「何それ?」という感じはしますが、地検には粘っていただきたいと思うところであります。