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(長谷川 学:ジャーナリスト)

>>「日銀総裁より高給取りの開業医がゴロゴロ、診療報酬引き上げは必要か(前編)」の続き

「年収3000万円の奴隷がどこにいるのか」

 診療報酬改定という医師の賃上げ闘争で国の財布を握る財務省と張り合う日本医師会。無駄な支出を切り詰めるのが仕事の財務省に対して、日医の尾崎治夫理事(東京都医師会長)は「私たちは、財務省の奴隷なのでしょうか」と11月の記者会見で発言。財務省が診療所の初診・再診料引き下げなどを主張したことに反発を示した。

 この発言はSNS上で話題になり「年収3000万円の奴隷がどこにいるのか」との反対意見も数多く見られた。

 確かに、中川俊男前日本医師会会長が対コロナで無為無策を続けた中、東京都医師会会長の尾崎氏はコロナ患者の在宅死が社会問題になった2021年8月に「コロナの自宅療養者は開業医が診て治療する」と発言したり、コロナ治療に有効とされながらほとんど利用されなかったイベルメクチンの使用に言及するなど、日医理事の中では珍しくコロナと闘う姿勢を見せた。

 だがコロナ問題が日本で始まったのは2020年1月。それから1年半も経ってからの発言はあまりに遅すぎた。

 尾崎氏が発言した21年8月だけでコロナに感染して治療も受けられず、医療機関以外で死亡した人は全国で250人。21年3月からの累計では全国で817人もの人が治療を受けられずに死亡していた。

 コロナと中心的に闘ったのは一部の大病院の勤務医と看護師で、「診療所も含めて医療従事者が国民と一体となってコロナ禍における日本医療を支えてきた」という松本日医会長の発言が事実を正確に反映していないことは、国民は皆、知っている。

 事実は、高給を取りながらコロナ禍という非常時に発熱患者の診察すら拒否する開業医が全国で横行する一方、コロナの最前線で闘う大病院の医師、看護師は不足したのだ。