(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年10月25日付)

日本の大平正芳首相と談笑する鄧小平氏(1979年2月2日東京の首相官邸で、写真:ZUMA Press/アフロ)

 当コラムでは最近3回にわたり、中国の国内総生産(GDP)と1人当たりGDPがほかの国々よりも速いペースで増えていく局面が、多くの人が考えている(あるいは、希望している)ように終わりつつあるのか否かを論じてきた。

 第1回では、中国はまだ貧しい国であるため急成長の可能性が残っていると述べた。

 国際通貨基金(IMF)によれば、中国の1人当たりGDPは2022年時点でも世界第76位にとどまっている。

 第2回では、最大の国内経済問題について考えた。

 慢性的な貯蓄超過は、借入金を燃料に燃え上がった不動産ブームという持続不可能な現象によって吸収されてきたが、そのブームも終わりつつあるという話だった。

 第3回では、人口の減少がもたらす制約を検討した。

 こうした議論の結果、これらの困難は深刻ではあるが、対処可能だという結論に達した。

台頭する大国の最大の困難

 そこで残ったのは、最も大きな制約である政治だ。

 中国は、対外的には米国やその同盟国における敵意の高まりを巧みに切り抜けていかねばならない。

 対内的には、よりバランスの取れた経済への移行を成し遂げ、共産主義国家と資本主義経済との関係を継続する必要がある。

 こうした課題は台頭する大国が直面する最大の困難だ。

 ここで対応を誤れば、最悪の場合には高所得の民主主義国との紛争になる恐れがあり、うまくいっても「中所得国の罠」に陥る国になる。