(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年4月10日付)

スタインの法則で知られるハーバート・スタイン氏(左)、右はリチャード・ニクソン大統領(1969年2月4日ホワイトハウスで、写真:AP/アフロ)

「永久に続かないものは、いずれ終わる」

 これはリチャード・ニクソン政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めた故ハーバート・スタインにちなみ「スタインの法則」として知られる。

 その言葉を公に使ったのは1989年6月、委員長が米国の貿易赤字と財政赤字に言及した時だった。

 どちらもまだ終わっていないとは驚きだ!

 だが、同様な重みを持つドイツのことわざにあるように、「木はどんなに伸びても天にはとどかない」。

 木が自分の重さを支えきれなくなる時がいつか必ず来る。

 これは国の債務にも当てはまる。どんな国にも債務の限度は存在する。米国ほど強い経済であってもだ。

急速に強まる政府債務への懸念

 トビアス・エイドリアン、ビトール・ガスパール、ピエール・オリビエ・グランシャの3氏が「高債務・低成長世界の財政リスクと金融リスク」と題した論考を国際通貨基金(IMF)のブログで先日公開し、今日のグローバルな状況の関係性を明らかにしている。

 総じて言えば、債務の持続可能性はプライマリーバランス(基礎的財政収支)、経済成長、実質金利、債務残高という4つの要素で決まると3氏は指摘する。

「プライマリーバランスの黒字――金利の支払いを除く政府の歳出よりも歳入の方が多いこと――が大きいことと経済が成長することは債務の持続可能性の達成に寄与するが、その一方で金利の上昇と債務残高の増加はその達成を困難にする」

 2007年の世界金融危機、そして2020年のパンデミックとその余波のために、高所得国と新興国では公的債務残高の対国内総生産(GDP)比が跳ね上がった。

 2028年までには前者が120%、後者が80%に達すると予想されている。

 この比率は高所得国では第2次世界大戦以降で最も高く、新興国に至ってはまさに過去最高だ。