(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年10月24日付)

怒りに任せて対応を誤ると、イスラエルとパレスチナを分断している壁は国際社会とも分断する壁になりかねない

「その怒りを感じても、のみ込まれてはならない。米国では『9.11』の後、我々は激怒していた。そして正義を求め、正義を手に入れたものの、間違いも犯した」

 ジョー・バイデン米大統領は最近、訪問先のイスラエルでこう語った。

 だが、米国が犯した過ちについて公の場で詳しく語らなかった。では、過ちとはどんなものだったのか。

 大雑把に言えば、米国は通常の軍事的手段によって「テロリズム」を倒そうとした。

 アフガニスタンとイラクで戦争を始め、その結果、数十万人が命を落とすことになった。

 だが、対テロ戦争に乗り出してから20年以上経った今、米国は恐らく2001年当時より力が衰え、世界各地で尊敬されなくなっている。

 そして米国社会が深い傷を負った。

米国と同じ過ちを繰り返す恐れ

 イスラエルは今、こうしたミスの多くを繰り返そうとしているのか。間違いなく、その危険がある。

 だが、イスラエルはミスを犯せる余地がはるかに小さい。

 米国は世界最大の経済大国だ。2つの海に守られており、同盟国と米国の支援を必要とする国々の世界的なネットワークを持つ。

 対照的に、イスラエルは敵対的な地域に存在する小さな国だ。

 自国市民を虐殺した組織を破壊しようとする願望は至って自然だ。

 ハマスを掃討するイスラエルの誓いは、2001年9月11日の同時多発テロ後にアルカイダとタリバンを破滅させると言った米国の誓いを彷彿させる。