日本でも配達員が急増したウーバーイーツ(写真:AP/アフロ)

「あれ、こんなところでおじさんが働いてる……」

 近年、非正規労働の現場でしばしば「おじさん」を見かける。しかも、いわゆるホワイトカラーの会社員が、派遣やアルバイトをしているケースが目につくのだ。45歳定年制、ジョブ型雇用、そしてコロナ──。中高年男性を取り巻く雇用状況が厳しさを増す中、副業を始めるおじさんたちの、たくましくもどこか悲壮感の漂う姿をリポートする。

(若月 澪子:フリーライター)

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 最近、街で「お茶を挽く」おじさんを見かける。

「お茶を挽く」は風俗や水商売用語だ。客の指名がなく、待ちぼうけを食らう風俗嬢やホステスのことを指す。江戸時代、売れ残った遊女に、罰として石臼で茶葉を挽かせていたのが語源という説もある。

 現代の遊女、もといおじさんが引いているのは、石臼ではなく自転車。彼らはウーバーイーツの配達員だ。

 スマートフォンのアプリを通じて、飲食店の料理を自宅まで運んでもらうウーバーイーツが日本に上陸したのは2016年のこと。最近は料理に限らず、スーパーやコンビニ、ドラッグストアの商品なども運んでもらえる。

 ウーバーの配達員は現在、飽和状態になっている。配達員の急増と、発注数の減少で、需要と供給のバランスが逆転し、少ない発注を配達員が奪い合っているのだ。結果、お茶を挽く配達員が街にあふれる。

「ウーバーイーツが日本で始まった当時は、こんな感じじゃなかったですよ。もともとはロードバイク好きの意識高い系がやる副業だった。それがコロナで一変しました」

 こう話すのはコロナ前から、週末にウーバー配達員の副業をしていた都内在住のRさん(51)。彼の相棒はロードバイクのジャイアント。ノースフェイスのウィンドブレーカーをまとい、腕にスマホ専用ホルダーを巻き付ける、ガチ風のウーバー配達員だ。

Rさんが愛用している配達用バッグ
その中身。中身がこぼれて客とトラブルにならないよう、いろいろと工夫している
お手製のクッション