「マック地蔵」はおすすめしない

 現在、Rさんはウーバーだけでなく、ほかのフードデリバリーサービスもかけもちしている。土日は二つのサービスのアプリを立ち上げて発注を待つ。本来、かけもちは禁止されているが、ほとんどの配達員はかけもちをしなければ、仕事が取れなくなっている。

「最近の配達員はサービス名のロゴが入ったカバンを使用しないから、かけもちしてもバレにくい。ただ『配達リクエスト』を受けるために、スマホで複数のデリバリーサービスのアプリを立ち上げると、バッテリーの消耗が激しくて。そのためにスマホを2~3台持っている人もいますね」

 経験が長いRさんに、効率よく稼ぐコツも聞いてみた。

「止まって待つより、動いている方が注文は入りやすい気がします。自分は同業者がたくさん待機するマックのようなところはあえて行かない。駅前の配達員を見かけないお店の周辺を転々とする。5分待ってリクエストが来なければ、次の駅に移動というように。移動範囲は半径2~3kmくらい。距離が遠い配達先、雨の日は稼働する人が少ないから狙い目ですね」

 中高年が配達員を始めるならば、どのような点に注意すればいいだろう。

「自分は若くないということを自覚した方がいい。1日20~30kmを走ることはザラですから。自分はコロナ前までジムに通っていたので、体力に自信がありますが、鍛えてない人は自転車ではなくバイクにした方がいいでしょう」

 これからワールドカップが始まるので、自宅で観戦する人からの注文が増えそうだというRさん。

「副業としてやるなら、お金目当てで始めるのはおすすめしません。運動不足とストレスを解消できるというくらいに考えた方が続けやすい」

 今日も配達員はウーバーから選ばれし者になれるよう神に祈る。

 ウーバーの神、グーグルの神、インスタの神……。謎に包まれたアルゴリズムで順位をつけてくるAIという神。こんな神様に振り回されるくらいなら、石臼で茶葉でも挽いている方が、心穏やかに過ごせるのではないか。