運動直後が効果的! 糖質補給でグリコーゲンの回復を

運動後の栄養補給の考え方(前篇)

2018.10.12(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

東郷 スポーツ選手の糖質摂取に関するガイドライン(Bruke et al., 2011)では、「運動直後からすばやい糖質を補給する際には、体重1kgあたり、1.0〜1.2gの糖質を摂取することが好ましい」とされています。この糖質量は、体重70kgの人であれば、おにぎり3個分、クロワッサンだと6個分、うどん2杯と、非常に多いものです。

 しかし、運動をされている方は経験があるかもしれませんが、運動直後はなかなか空腹感を覚えにくいものです。だからといって、運動直後に糖質を摂らないと、筋グリコーゲン量の回復を遅らせてしまうことになります。

――どうすればよいのでしょう?

東郷 筋グリコーゲン量を回復させる糖質の分量を一気に摂取することが大変であれば、時間をかけて少量ずつ頻回に摂取すればよいのです。たとえば体格に見合った糖質を含む飲料を、少量ずつ頻回に摂取することでもインスリンの分泌量は高められることを、博士論文の研究で明らかにしています。

体格に見合った糖質飲料の摂取時間の早い条件と遅い条件による、それぞれのインスリン分泌量の変化。白丸○は、被験者が任意の早さで糖質飲料を自由に摂取した、早い摂取条件。黒丸●は、糖質飲料10〜15mlを30秒ごとに摂取した、遅い摂取条件(早い摂取条件より17分ほど長く時間をかけて摂取)。後者では、少量・頻回で摂取することにより筋肉に糖質を取り込むインスリン分泌の作用を高められた(出典:東郷氏の博士論文「高強度運動後の早期回復を目指した栄養補給に関する研究」を参考に作成)

身を削らぬため、運動前の栄養補給も

――運動をする“前”に糖質補給しておくことの大切さについてもお聞きします。

東郷 グリコーゲン量が少ない体の状態で運動を続けていると、体は筋肉(タンパク質)を分解してエネルギー源を捻出し、利用するようになります。筋肉を分解しながら運動を継続することのメリットは何も見いだせません。身を削って時間を浪費しているようなものです。運動前にも適切な糖質を摂取してから、運動をすることが大切です。

――運動前の糖質補給は、どんなタイミングでするとよいのでしょうか?

東郷 一般的には2時間前か1時間30分前ぐらいに、おにぎりやバナナなどの食べものを摂るとよいとされています。より直前の時間帯では、消化に負担の少ない糖質ゼリーなどを摂るとよいとされています。

 糖質が消化・吸収されるまでには30分以上の時間がかかります。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。