千差万別のご当地納豆、東北で好まれる納豆とは?

今もなお続く、“東高西低”の消費状況

2018.10.05(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要

 江戸時代になると、納豆ブームがやってきた。それまで、自家製だった納豆の商業生産が始まり、江戸では、納豆売りが毎朝「たたき納豆」を売り歩くようになった。たたき納豆は納豆をたたいて平たくしたもので、細かく刻んだ青菜と豆腐が添えてある。簡単に納豆汁ができるので、江戸の庶民の朝ごはんは納豆汁が定番になった。

 ちなみに、納豆売りは関西にはあまりいなかったが、納豆汁は食べられていたようである。今では、納豆汁は秋田県や山形県など東北の一部の郷土食の扱いになってしまった。

最近は小粒が人気

 納豆は庶民のおかずとしてなじみ、やがて納豆ご飯が広まった。忙しい朝なら、納豆汁にするより、ご飯にかけて食べるほうが手軽だ。もっとも、昔の発酵技術では納豆の品質を保つのは難しく、加熱して汁にして食べるほうが安全でおいしかったはず。明治時代以降、製造技術が進歩し、納豆の品質が向上したことや冷蔵庫が普及し保存性が高まったことが、粒納豆の広がりにつながった。

「粒納豆」は、大豆の粒がそのまま残る納豆である。大豆の種類によって粒の大きさもさまざまで、大粒から小粒、極小粒など粒の大きさの異なる製品が出回っている。数十年前までは大粒が人気だったが、近年はご飯との混ぜやすさから、小粒納豆に人気がある。

 興味深いことに、粒の大きさの好みにも地域差があり、北海道や関東はより小さな粒を好み、九州では中粒を好む傾向がある。極小粒の納豆は、茨城県特産の「地塚大豆(じづかだいず)」が原料によく使われている。粒が小さいほうが発酵もよく進み、おいしく仕上がる。粘りも強く、口当たりがよいので全国に広がり、水戸納豆が有名になるきっかけになった。

「ひきわり」に「五斗」・・・ご当地の納豆

 東北地方では、「ひきわり納豆」が他の地域より好まれる。ひきわり納豆は大豆の皮をとって、刻んでから発酵させたもの。やわらかく口当たりがよいのが特徴だ。市販されている納豆全体に占める割合は1割弱だが、秋田県など東北地方の一部では半分近くを占め、昔から好んで食べ続けられている。

巻きずしの具材にもなる、ひきわり納豆。
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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


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