主要産油国の増産見送りは何を意味するのか

市場の「強気」の見方に反して台頭する下落リスク

2018.09.28(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54214
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 高株価の要因は、信用スプレッド(10年物国債とジャンク債の利回り差)が拡大しないことにある(市場アナリストの市岡繁男氏)が、米国の10年物国債の利回りが3%を超えてもジャンク債発行体の約15%を占めるシェール企業の財務内容が原油価格の上昇傾向で改善されるとの期待から、信用スプレッドが拡大していない。トランプ大統領は、米国株式市場の好況を「自らの政策のおかげだ」と豪語するが、株価の急落というリスクを承知の上で主要産油国に対して「原油価格引き下げ」を要求したのだろうか(「トランプ大統領は増産を見送った主要産油国に対し感謝すべきである」との皮肉も言いたくなる)。

 2016年から2017年にかけて「原油需要のピークが近いうちにやってくる」との議論が盛んに論じられた。しかし、9月に入ると「原油需要は今後5年以内にピークを迎える」との予測が相次いでいる(9月11日付OILPRICE)。

 昨年までの議論では「電気自動車などの台頭で運輸用の需要は先細りになるが、プラスチックなど石油化学の需要は大幅に拡大することから、ピークは2030年以降である」と石油関係者一同が安堵するという結論だった。だが、今年に入り世界の海洋プラスチック廃棄物が世界的に問題視されるようになり、米国やEUはもちろんのこと、インドなど新興国でもプラスチックの使用制限の動きが高まっている。プラスチックに対する風当たりの高まりが原油需要のピークを前倒しするのではないだろうか。

米国は世界の安全な原油供給を確保し続けられるか

 米国のシェールオイルの台頭に加え、需要の伸びが先細りするとなれば、主要産油国は「泣き面に蜂」である。窮地に追い込まれ、特に中東地域での地政学リスクが高まる。

 JMMCの開催前日に当たる9月22日、イラン南西フゼスタン州の州都アフワズで行われた軍事パレードが武装グループに襲撃され、多数の犠牲者が出た。同州はイスラム教スンニ派が多数を占める大規模なアラブ人コミュニティーがあり、イラン・イラク戦争(1980~1988年)で主戦場となったが、こうした攻撃が起きるのはまれである(9月22日付AFP)。その後、イスラム国が犯行声明を発出したが、イラン側はサウジアラビアやUAEに加え、米国やイスラエルも襲撃に関与したと反発を強めている。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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