米WTI原油先物価格は1バレル=65~70ドル台のレンジで依然推移しているが、徐々に下降傾向が強まっている。
原油価格を左右する要素は(1)「米国の制裁によるイランの原油生産の減少」と(2)「米中貿易摩擦に端を発する世界の原油需要の減少」であるという構図に変わりはない。
原油輸出量の維持に必死のイラン
まずイランの動向だが、8月の原油生産量は前月比12万バレル減の360万バレルとなり、原油輸出量は2年半ぶりの低水準となった(9月3日付ブルームバーグ)。7月に日量19万バレルのイラン産原油を輸入していた韓国が8月の購入量をゼロにした(9月10日付ブルームバーグ)ことなどが要因である。イラン産原油の供給減でヘッジファンドの原油に対する楽観的な見方が復活しつつある(9月3日付ブルームバーグ)が、イランも原油輸出量の維持に必死である。
イランは輸出先の取りこぼしを防ぐため、大幅な値引き販売を始めており、競合するサウジアラビア産原油との価格差は直近1年で3倍に拡大している(1バレル当たり0.27ドルから0.85ドルへ)(9月10日付日本経済新聞)。
韓国や日本の動きとは異なり、イラン産原油の大需要国である中国とインドは、イランのタンカーを利用して制裁を回避し、輸入を継続しようとしている(9月4日付OILPRICE)。8月の中国のイラン産原油の輸入量は日量87万バレルと引き続き堅調である(9月7日付OILPRICE)。
イランはさらに前回と同様、制裁による打撃を緩和するために「タンカー追跡システムの作動を無効にし、原油輸出の目的地と量を隠蔽する」という秘密裏の原油輸出を行う可能性がある(9月4日付ブルームバーグ)。