サウジアラビアの政治体制をさらに動揺させる原油安

ムハマンド皇太子への生前譲位は成功するのか?

2018.09.14(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54094
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 原油価格の上昇による原油売却収入が増加しても、イエメン戦争の経費が嵩み、サウジアラビアの財政事情は一向に好転していない。

 サルマン国王はイエメンの戦況についても憂慮しているようだ。国王は自身の宮殿に上級司令官を集め戦況についてのブリーフィングをさせており、対米外交についてもホワイトハウスと距離を置くようになっているという。

 9月9日付アルジャジーラによると、サルマン国王の弟であるアハメド元内相が、「イエメン戦争の泥沼化はサルマン国王とムハンマド皇太子の責任である」と批判したことが明らかになったという。ムハンマド皇太子の「やり過ぎ」に身内からも批判が噴出する事態に頭を悩ませる国王は、「可愛い息子が大きな傷を負わないうちに」と尻ぬぐいに奔走しているように思えてならない。

 8月下旬、サルマン国王は避暑地のNEOM(紅海沿岸の新産業都市建設予定地)からメッカに移動し、兄弟たちとの王族会議を開催しようとしたが、招集に失敗したとの情報がある。国王はこの会議で、国王の選出を行う忠誠委員会の主要メンバーからムハンマド皇太子への生前譲位に関する最終的な合意を得る腹づもりだったようだ。しかし、あえなく空振りに終わってしまった。その後、82歳のサルマン国王は喘息と過度の疲労により危険な状態になり、公務を行えない状態にあるとの憶測が流れている(真偽のほどは定かではない)。

 生前譲位が成立しなければ、ムハンマド皇太子の国王就任は白紙に戻る可能性がある(前国王が就けたムクリン皇太子は前国王の死去後に失脚した)。このままサルマン国王が死亡し、ムハンマド皇太子が前例のない強引なやり方で王位に就こうとすれば、サウジアラビアに未曾有の危機が勃発するのではないだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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