サウジアラビアの政治体制をさらに動揺させる原油安

ムハマンド皇太子への生前譲位は成功するのか?

2018.09.14(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54094
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主要産油国の増産基調が鮮明に

 他方、イランを除く主要産油国は増産基調が一層鮮明になってきている。

 8月のOPECの原油生産量は日量3257万バレルと10カ月ぶりの高水準となった(9月6日付OILPRICE)。注目すべきは、政情不安に悩むリビアの原油生産量が前月比31万バレル増の94万バレルと急回復したことである。サウジアラビアは前月比10万バレル増の1049万バレルとなり、イラクも石油積み出し港がある南部で暴動が拡大しているものの、前月比11万バレル増の468万バレルと過去30年で最高水準となった。原油生産の激減が懸念されているベネズエラも前月比2万バレル減の122万バレルに留まっている。

 ロシアの8月の原油生産量は日量1121万バレルと過去最高水準を維持している。

 米国の原油生産量も日量1100万バレルと過去最高水準を維持している。シェールオイルの主要産地である南部パーミアン鉱区では、生産量の急増に輸送パイプラインの能力が追いつかない事態が発生していたが、鉄道による原油輸送が開始されパイプラインの増設も相次いでいることから、ボトルネック解消が予想以上に早く進むとの見通しである(8月30日付OILPRICE)。

 米国ではこの時期ハリケーンの襲来で原油生産に支障が生ずることが多い。9月5日にルイジアナ州やミシシッピー州に上陸した熱帯性暴風雨「ゴードン」は、当初の予想より勢力を拡大せず足早に通過したことから、海洋油田に大きな被害をもたらさなかったが、週末にかけてハリケーン「フローレンス」が米国南東部に上陸するとの思惑から原油価格は1バレル=70ドル台に上昇している。だが生産施設に大きな支障がない限り、原油価格の上昇要因となる可能性は低い。

 また、米エネルギー省は8月31日、10月からの本格実施に備え戦略石油備蓄(SPR)から計1100万バレルの原油を放出するオペレーションを行った(エクソンモービルなど6社が購入)。

 このようにイランを除く主要産油国は11月にかけて準備万端であるため、イラン産原油の輸出量が前回と同様日量100万バレル減少したとしても、世界の原油需給が逼迫する恐れがなくなりつつある。マーケットでは「噂で買って事実で売る」という現象がしばしば発生するが、米国のイラン制裁が実際に発動されれば、原油価格はむしろ下落するのではないだろうか。

新興国に経済変調の兆し

 原油価格の動向を左右するもう1つの要素(需要)の状況は不透明さを増している。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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