主要産油国の増産見送りは何を意味するのか

市場の「強気」の見方に反して台頭する下落リスク

2018.09.28(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54214
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 両氏のコメントから「原油価格は米国のイラン制裁の影響で上昇しているのになぜ我々が尻ぬぐいをしなければならないのか。今後の原油需要が軟調に推移するのに増産したら原油価格は大幅に下落してしまう」との思いが伝わってくる。

 また具体的な数値目標を示さないことで、両国の増産に反発していたイランに一定の配慮を示した可能性がある。主要産油国が「憎き米国」の要求を退けたことに安堵したイランのOPEC代表は「サウジアラビアとロシアには余剰生産能力はなく、原油価格は今後上昇する」との見方を示した。

 だが、各国の記者発表を総合すると、サウジアラビアの日量150万バレルを筆頭に、アラブ首長国連邦(UAE)は60万バレル、クウェートは40万バレル、ロシアは10万バレル、主要産油国全体で約260万バレルの増産が可能であることが判明した。260万バレルという数字は、イランの今年4月の原油輸出量に相当する。イランの8月の原油輸出量は日量190万バレルまで減少したが、9月に入り増加に転じたとの報道がある(9月19日付OILPRICE)。米国はイラン産原油の輸出量を限りなくゼロにしようと躍起になっているが、イラン産原油の輸出量が前回と同様の規模(日量100万バレルの減少)であれば、市場の見方が「需給逼迫」から「需給緩和」に転ずる可能性がある。

米国の原油在庫減少も「強気」材料に

 足元で強気の見方が出ているもう1つの要因は、ドライブシーズンが過ぎても米国内の原油在庫が減少を続けていることである(2015年2月以来の4億バレル割れとなった)。

 WTI原油先物と北海ブレント先物の価格差が拡大したことから米国産原油の輸出が再び増大するとともに、石油製品需要が引き続き高水準で推移していることから原油在庫は減少を続け、強気派の背中を押している。

 ただし、米国の原油生産量は増加傾向にある。米国では石油掘削装置(リグ)稼働数が860基、原油生産量が日量1100万近辺で推移しているが、米エネルギー省が9月17日に公表した月報によれば、米国の10月の原油生産量は9月に比べて増加する見通しである。シェールオイル生産の半分を占めるパーミアン地域では相変わらず輸送インフラが不足しているものの、原油増産の動きが再び始まっており、シェールオイル全体の生産量が日量759万バレルまで拡大するからである。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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