主要産油国の増産見送りは何を意味するのか

市場の「強気」の見方に反して台頭する下落リスク

2018.09.28(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54214
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 OPECも前述の予測で「OPEC産原油の生産量は2017年の日量3260万バレルから2023年に同3160万バレルに減少するのに対し、米国のシェールオイル生産量は2017年の日量740万バレルから2023年には同1340万バレルに増加し、米国の原油生産量は同2000万バレルに達する」としており、今年の米国の原油生産量は年間平均で世界一になる見通しである(国際エネルギー機関(IEA))。

 このように米国は年を追うごとに「原油消費国」から「原油生産国」へと軸足を移しつつあるが、急速に変化する構造にトランプ大統領自身がまったく理解していないことをツイッターにより図らずも露呈してしまった感が強い。

低迷する中国とインドの原油需要

 8月の世界の原油生産量は日量1億バレルを突破し(IEA調べ)、世界の原油市場は既に供給過剰気味となっている。では、原油需要はどうなるのだろうか。

 IEAは9月13日、「世界の原油需要は今後3カ月で日量1億バレルを突破するが、主要新興国について潜在的リスクがある」との認識を示した。

 世界最大の原油輸入国である中国は米国との貿易戦争が激化の一途をたどっている。米国は24日、中国からの輸入品6000品目近くに10%の追加関税を課した(来年以降は税率を25%に引き上げる)ことにより、中国は月内に予定されていた米国との通商協議を取りやめた。中国側が関税対象を1100億ドルに拡大したことから、トランプ大統領は全輸入品に対して制裁関税発動を辞さない構えを見せており(9月24日付ブルームバーグ)、事態の収束はますます見通せなくなっている。

 マクロ経済の変調を反映してか、中国の8月の原油需要は9カ月ぶりの不調となっており、今後、両国の対立が続けばその傾向は強まることだろう。原油高が続いていることから低迷していた中国国内の原油生産も8月に底を打ったことで、今後原油輸入量の伸びが鈍化するのは必至の情勢である。

「第2の中国」と期待されているインドも最近の原油高と米国の金利正常化がもたらす悪影響から原油需要の低迷が鮮明になってきている(9月24日付OILPRICE)。

原油需要のピークが前倒しに?

 米国の原油需要は原油高にもかかわらず引き続き好調だが、原油価格が下落すると、むしろその需要は減少するリスクがある。以前のコラムで指摘したように、米国経済の好調さを体現する高株価は原油価格の好調さに下支えされているからだからだ。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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