今や筋子を圧倒、「イクラ」はロシアからやって来た

「鮭の卵」への眼差し(前篇)

2018.09.14(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

<「いくら」と称しソ連人の製法によるものがある>

 この書き方からすると、1950年時点では、鮭の卵の食材といえば「筋子」が主流であり、「イクラ」は食品業界の人たちにも知れわたっていない食材だったのではないか。ただし、イクラについては<万人の嗜好に適し、嗜好度が高い>とも述べているので、味の評価は高かったことがうかがえる。

筋子。鮭などの卵を卵巣から取り、一腹ずつ塩漬けにする。

 すっかりイクラも日本中で認知されるようになった現在、イクラと筋子の供給量は逆転し、イクラが圧倒している。水産通信社の『水産物パワーブック2018』によると、2017年のイクラの国内生産量は3130トン(輸入は計7114トン)に対し、筋子の国内生産量はわずか50トン(同6002トン)。2017年は鮭漁の不振がたたり、いずれの国内生産量も前年を下回った。

 日本における「鮭の卵」は、古くは鮭漁に恵まれたわずかな人たちが味わっていたものであり、近代になりロシアからの「イクラ」や「イクラ加工」の移入で日本で広まる素地ができ、戦後ついに万人が食べる「日本の食」の1つとなったのである。

 後篇では、そんなイクラに向けられた現代の食品加工技術を見てみたい。イクラの品質を向上する「通電加熱」という技術が開発されているのだ。研究者に話を聞こう。

後篇へつづく)

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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