消化のプレイングマネジャー、膵臓・肝臓・十二指腸

考究:食と身体(5)婚姻の神ジュノー篇

2018.08.31(Fri) 大平 万里
筆者プロフィール&コラム概要

 たとえば、胃に食べ物が入ると、胃の出口の幽門から十二指腸にかけて「ガストリン」というホルモンが分泌され、胃液の分泌を促進する。これで胃での消化が本格的に始まる。

 そして、消化物が胃から十二指腸へ移ったとき、その刺激によって「セクレチン」というホルモンが分泌され、胃酸分泌を抑制する一方で膵液分泌を促進する。つまりは、胃の消化活動を一旦落ち着かせるわけだ。

 また、脂肪など消化に時間のかかるものが入ってきた場合、「コレシストキニン」というホルモンが分泌され、胃の蠕動(ぜんどう)運動を緩やかにし、胆汁の分泌を促進させる。脂肪の消化が効率的に進むよう調節されるのだ。

 前回の第4回「想像以上の働き者、胃の正しいメンテナンス方法」で述べた空腹時の胃の蠕動運動も、十二指腸や小腸から分泌される「モチリン」というホルモンによって調節されている。このホルモンは、酸性の胃からの消化物が途絶え、十二指腸がアルカリ性に傾くと分泌される。

 これらのホルモンは、消化吸収の状況に合わせて、脳の食欲中枢とも連携しており、食欲調節の一部に組み込まれている。

 上記のほかにもさまざまなホルモンが相互に作用しあうことで、最も効率的な消化活動を実現させるように調節されている。やはり十二指腸は単なる仲人でなく、膵臓と肝臓を従えて消化吸収のフロー全体(ジュピターの素行)に目を光らせている管理センター(鬼嫁)なのである。

許容範囲を超えると病気に。内と外がつながると危険

 しかしながら、こうした巧妙なシステムは、なんらかの原因で調節の許容範囲を超えると深刻な事態になることが多い。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

1964年東京生まれ。生物・化学系ライター。熊本大学理学部生物学科卒業。北海道大学理学研究科博士課程修了。博士(理学)。旧工業技術院(現・産総研)、秋田県立農業短大附属属研究所などの流動研究員、高校教諭等を経て現在に至る。最近はその辺に転がる岩石の来歴が気になってしょうがない。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。